【田原】ドラゴン桜?
【税所】日本の漫画です。落ちこぼれたちが東大を目指して勉強を始めて、人生を変えていくというストーリーで、僕らの世代に人気がありました。
【田原】なるほど。その漫画のリアル版を世界中で展開するということですか。
【税所】はい。それを言い出して前向きに取り組み始めたら、いろいろと動き始めました。まず東大の開発経済の先生から、「バングラデシュのプロジェクトの子どもたちへの成果を研究しよう」というお誘いを頂き、研究予算をつけてもらうことになりました。
現地にはマヒーンという強力なパートナーもいますので、それなら自分は他国での立ち上げに行こうということになり、ルワンダに向かいました。
【田原】どうしてルワンダに?
【税所】ルワンダは1994年に内戦がありました。その際に起こった虐殺で先生たちも大勢殺され、とくに理科の先生が足りないということでした。村に行くと、学校にフラスコがなくて理科の実験もできないそうです。それならば理科の実験コンテンツを撮影して、同じモデルで広げたらどうかと。
【田原】深刻ですね。うまくいったの?
【税所】ここも大変でした。教育省の許可がなかなか下りないので、まず小さい村でトライアルをして実績をつくろうとしました。それが評判になって教育委員会からたくさん依頼がきたのですが、教育省の高官が「勝手にやった」と言って怒ってしまった。高官に嫌われると何もできないので、僕はプロジェクトから外れました。その後、チームの最年少18歳の牧浦土雅が担当して、いまは7つの高校のパソコン室を借りて700人の生徒に理科のコンテンツを流しています。
【田原】五大陸だから、もっと行かないとね。次はどこですか。
【税所】ヨルダンです。パレスチナの難民キャンプはバングラデシュと同じで、お金のある人は予備校に行けて、ない人は進学を断念するという階層化が進んでいます。そこで高校に話を持っていったところ、30人の受験生のうち2人がヨルダン大学に合格しました。それから13年3月からはハンガリーでも動き始めています。ヨルダンを立ち上げる途中でコソボに見学に行ったら、ロマ(ジプシー)の人たちが教育格差で苦しんでいるという話を聞きました。いまはロマの人向けの教育コンテンツを撮影しているところです。