首相サイドが考えているのは「説明」ではなく「解散」

首相主催の公的行事「桜を見る会」をめぐる疑惑が噴出した臨時国会は、真相解明が進まぬまま12月9日閉幕した。

野党側は、安倍晋三首相の後援会関係者が多数招待されていたことなどを「公私混同」と批判し、守勢に立った首相の答弁を二転三転させたが、招待者名簿が廃棄されたことで決定打は出ず、国民の納得する説明はないまま年越しすることになった。

野党は来年の通常国会でも徹底追及する構えだが、首相サイドの脳裏に浮かぶのは「説明」ではなく、「解散」の2文字だ。第2次安倍政権以降、2度の衆院解散・総選挙は内閣支持率の下降局面で実施されており、首相の「伝家の宝刀」をテコに疑惑払拭と求心力回復に結びつけてきた成功体験がよぎる。

写真=時事通信フォト
衆議院選挙に向けて街頭演説に立ち、手を携える安倍晋三首相(右)と公明党の山口那津男代表=2017年9月28日、東京都渋谷区のJR渋谷駅前

「安倍一強」といわれる盤石な基盤の要諦とは

通算在職日数が11月20日に2887日に達し、戦前の桂太郎氏を抜いて史上最長の宰相となった安倍首相。約1年の短命に終わった第1次内閣は政権運営に稚拙さが目立ったが、2012年末の政権奪還後は窮地も難なく乗り切るタフな宰相に変貌した。

頼りない野党に助けられた部分もあったが、「安倍一強」といわれる盤石な基盤の要諦は、緻密に計算されてきた衆院の解散戦略にある。

安倍首相による1度目の衆院解散が断行された2014年は、4月に消費税率が8%に引き上げられ、7月に集団的自衛権の行使を容認する閣議決定、12月には特定秘密保護法が施行された。首相は11月、2015年10月に予定されていた消費税率10%への再引き上げを1年半先送りすることを理由に衆院解散を表明。12月14日投開票の衆院選は自民党が大勝した。