自民党圧勝が予想されたにもかかわらず、解散しなかった
2019年は統一地方選と参院選がある「選挙イヤー」で、支援組織・団体は活動を活発化させていた。7月の内閣支持率は45%で、これまで通りの解散戦略から見ても「衆参ダブル選」を行うことがセオリーだった。
首相に対する「ご意見番」的存在の亀井静香元金融担当相は4月、日本テレビ番組でダブル選について「やるのが当たり前でしょ。安倍首相がバカでない限りはやるよ」と発言し、首相周辺からも「ダブル選の可能性がある」というアナウンスがあった。
実際、安倍首相も参院選開票日の7月21日には「(ダブル選を)迷わなかったと言えばウソになる」と選択肢にあったことを明らかにしている。野党がまとまらない時期でもあり、自民党圧勝が予想されたにもかかわらず、この時は解散カードを切らなかった。
参院選だけの「片輪走行」となった結果、参院の改憲勢力は3分の2にとどかず、臨時国会での国民投票法改正案の成立も先送りとなっている。
森友・加計問題を思い出させる行政文書の大量廃棄
そして、2度目は「11月解散」の見送りだ。今夏の衆参ダブル選をスルーした理由についてはさまざまな評論が出ているが、首相側近の1人は「安倍首相の悲願である憲法改正につなげるために温存した。国会での憲法論議が停滞するようであれば『このままで本当に良いのか問いたい』と年末に総選挙を断行する考えもあった」と明かす。
首相も参院選後の記者会見で「(憲法改正は)必ずや成し遂げていく」とトーンを強めていたが、「伝家の宝刀」を抜くことはなかった。ちなみに11月の内閣支持率は47%だ。
この「11月解散」が選択肢から外された最大の理由は、11月8日に火ぶたが切られた「桜を見る会」をめぐる国会での追及にあるのは言うまでもない。森友・加計問題を思い出させる行政文書の大量廃棄が発覚し、1000人にも上る「首相枠」で後援会関係者やマルチ商法幹部、さらには反社会的勢力が招待されていた疑惑が持ち上がった。テレビのワイドショーはこの話題を連日取り上げ、政権の「体力」はそがれていった。