2018年の京都市への観光客数はインバウンドを含め5275万人で、観光消費額は3年連続で1兆円を突破した。だが、日本人宿泊客数は4年連続で減少している。ジャーナリスト・僧侶で京都在住の鵜飼秀徳氏は「近年の京都の混雑ぶりは異常。しかも悪質な観光公害が後を絶たない。京都は日本人から敬遠されるようになっている」という——。
撮影=鵜飼秀徳
ゴミ箱の周辺に散乱するゴミ

京都市民の堪忍袋の緒が切れそうな「観光公害」

ふるさと自慢になって恐縮だが、京都の紅葉には心底うっとりとさせられる。私は1年半前に24年ぶりに東京から、故郷の京都にUターンしてきたが、四季の移ろいを五感で味わえる生活に、何よりの贅沢ぜいたくを感じている。

しかしながら、四半世紀前と比べて京都が様変わりし、失望した面があるのも事実だ。

それは、いわゆる「観光公害」である。自坊は観光客でごったがえす嵯峨・嵐山地区にあり、観光客の急増に伴う「危うさ」を身にしみて感じている。地元住民の生活に、大きな影響が出始めているのだ。

随分、改善されてきてはいるものの、観光客の「マナー」の悪さは依然としてある。それは、「ゴミのポイ捨て」「樹木を折ったり、落書きしたりするなどの破壊行為」「大声を出す」「路上駐車」「車道で写真を撮るなどの交通妨害」「私有地への無断立ち入り」「舞妓さんなどへの付きまとい」など、挙げればきりがない。