1990年ごろの観光客数は年間3500万人、今や6年連続5000万人超

観光客の増加は、それそのものは京都にとっては良いことだ。歴史的にも「観光ありき」の京都だからだ。観光消費額は3年連続で1兆円を突破。京都市は雇用誘発効果を18万8000人としている。近年の経済的なメリットは計り知れない。

しかし、それも過剰になり、「公害」にも発展すれば、観光する側、受け入れる地元側双方にとって不幸である。

少し観光に関する数字を紹介しよう。バブル期にあたる1990年ごろ、京都の観光客は年間3500万人ほどだった。この頃、嵐山界隈は外国人の数はさほどではなく、日本人のみで混雑していた記憶がある。

当時問題になっていたのは、タレントショップの乱立である。まるで原宿・竹下通りのようなありさまだった。嵐山の景観を台無しにするひどさであったが、全てのタレントショップが一掃されたのが数年前のことである。

ようやく嵐山らしい風情が戻ったと、ホッとしたのもつかの間、京都市は2000年に観光客5000万人構想を発表。すると、計画より2年前倒しの2008年には目標を突破する。2018年の京都市への観光客数は5275万人で、6年連続で5000万人を超えている。近年の京都の混雑ぶりは異常だ。

ライトアップで昼も夜も観光客がウロウロ徘徊

京都において、もっとも宿泊数の多い月(2018年)は紅葉の時期の11月だ。日帰り客と宿泊者客を合わせた総数の最多月は3月である。

しかし近年の傾向として、年間を通じて「常に観光客が多い」と感じる。

2003年、観光客が1年を通じてもっとも少なかった2月の186万人に対し、同年11月では666万人。その差は3.6倍もあった。それが昨年は7月の383万人に対し、3月の531万人とその差が1.4倍に迫っている。

撮影=鵜飼秀徳
大混雑する嵐山の中心部。天龍寺前

したがって、常に観光客が名所をウロウロしている状態だ。夜かなり遅い時間でも、生活道路に入り込んでくる。私は、「ライトアップ」が原因ではないかと思っている。いま京都の寺は見回せば、猫も杓子も「ライトアップ」している。観光客の方々が喜んでくれるのはよいが、同時に迷惑している地元民がいるのも確かだ。観光客増に乗じた寺院の、安易な商業主義が透けて、私は素直に歓迎できない。