私はこの現象を「組織のジレンマ」と命名し、大発見をしたと考えていたが、じつはローレンス・J・ピーターが1969年に「ピーターの法則」として立証していたのである。ピーターの法則は「すべての人は、いずれはその人の『無能レベル』に到達し、やがてあらゆる地位は職責を果たせない無能な人間で占められる」という仮説だ。さらに、伊カターニア大学の研究チームはピーターの法則に基づいて「成果主義よりくじ引きで昇進を決めたほうが、組織効率が上がる」ということを証明したという。この研究は「人を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に贈られるイグノーベル経営学賞を受賞している。日本の企業も自分たちの人事のあり方について考え直すべきだ。
たとえば営業利益率25%超のサムスン電子は徹底した成果主義を追求し、マネジメントや最先端の研究開発について猛烈に勉強し続けなければ淘汰される仕組みだ。30歳で課長になるときは同期の半分がいなくなり、40歳で部長にならなければ全員が首という厳しさだ。したがってサムスンの部長クラス以上はマネジメント能力も高く、技術の最前線についても非常に詳しい。
日本の企業社会では技術は得意だが、マネジメント能力のない人が無能課長になり、開発現場も無能な人ばかりの組織と化していく。こうした負の連鎖を断ち切らなくてはならない。