自分より優秀な部下をどうまとめるか

コミュニケーション力という点では、国内外を問わず、マネジメントの重要性が一層高まると考えている。私はマネジメント力の基本は組織内の情報を集約する力、チームとしての総合力を生かす力、そして全責任を引き受ける決断力だと思っている。

生煮えでもいい、お客様に関する情報が、より早く、そのまま上がってくることが大事であり、誤解を恐れずに言えば、悪い情報が飛び交う職場こそ健全で正しい。仕事をしていれば当然悪いことも発生する。しかし組織では、往々にして悪い情報をそのまま上に上げると叱責されるので、対策まで組み立てたうえで報告しようとしがちだが、そうなると対処のスピードが遅くなり、かえって組織のリスクとなる。

私は自分の部下に「悪い情報を持ってきた部下に辛く当たるな。よくそんな言いにくいことを言いにきてくれたね、と褒めろ」と常に言っている。悪い情報も含めて、いち早く情報を集約するのがマネジメントの基本だ。

私はたまたま社長を務めているが、社員の誰よりも優れているから社長になったわけではない。どの職場にも上司よりも優れた着想を持つ部下は必ずいるし、より価値のある情報を持つ部下もいる。そうした部下の力をまとめ上げることもマネジメントの要件だ。

そして最後に決断する力だ。学生時代は皆、必ず正解のある世界で学業の訓練をしてきたが、ビジネスの世界は正解があるとは限らない。3つの選択肢がある場合、すべて間違いかもしれないし、3つとも正しいかもしれない。そうした状況の中で、最後に腹を括って決断するのがマネジメントの役割だ。

現在、当社もグローバル規模でのマネジメント力の強化に注力している。海外拠点のナショナルスタッフのうちマネジャー以上は3~4割であるが、この比率をもっと高め、拠点のナンバー2ないしトップに据えたいと考えている。海外でのビジネスは日本人が赴任して、そこに根を張ることも大事だが、その土地で育った人が持つ社会とのネットワークも重要だ。