三井住友FG社長 
宮田孝一氏

銀行のビジネスは、お客様が必要なときに資金を融資するという受け身の姿勢からソリューションビジネスへ急速に変化している。いま、銀行は顧客企業に、工場の立地の紹介から商品の付加価値を高めるアドバイスまで、多岐にわたる提案を行っている。

銀行は産業の黒子役だ。お客様のビジネスが大きくなれば、それに付随して裏づけとなる取引の拡大につながり、銀行自体も成長する。それは国内にとどまらない。これからは海外でもこれまでの日本の成長過程で培ったノウハウをビジネスに生かしていく。

たとえば東南アジアなどの著しい発展が見込まれる新興国で経済成長と環境保護を両立させるために、日本の経験から生まれた環境技術を紹介し日本と現地の企業を仲介する役割を担うことで、銀行の持つファイナンス業務の付加価値が高くなる。国内外のお客様のニーズに耳を傾けること、そして時にはニーズを先取りした提案をお客様に積極的に行うことが求められている。

昨年は天災など予測不可能な事象が発生した。私も2年前まで市場部門に10年間在籍し、市場の変化の早さ、予測の難しさを身に染みて感じてきた。

現在のようなビジネスモデルの変化や世の中の動きが流動的な時代に求められる人材の要素は、(1)情報への感度、(2)柔軟な発想、(3)決断力、(4)行動力――の4つだと考えている。

ここでいう情報とは、新聞などの既存メディアから発信されるものではない。自ら動き、街角に立つことで得られるものだ。お客様との会話など人とのコミュニケーションの中から掴む情報が一番鮮度が高く、価値も高い。それをキャッチできる人が情報感度の高い人だ。世の中には情報が溢れ日々行き交っている。情報が行き交う「交差点の真ん中にいる人」は人材として価値が高いといえるだろう。