3カ月で済ませる黒字化への準備
ただし、部門長は絶対に部下に任せきりにしてはいけない。相手に嫌われるぐらい、日々あるいは1週間ごとに、チェックリストの内容と現状との乖離に目を光らせる必要がある。なぜなら、6つのうち1つでも欠けた要素があれば、計画は実現不可能になってしまうからだ。
部門業績を1年で立て直すというのは“短期決戦”である。2000年、私はニコンとフランスの眼鏡レンズメーカー・エシロールの合弁企業ニコン・エシロールの代表取締役に就任し、50億円の赤字を抱えていた同社を1年目で黒字へ、2年目で無借金経営に転換させた。
その際、私は「3カ月後に黒字にする」と宣言した。周囲は冗談かと思ったようだが、これは「3カ月で黒字化の準備態勢を全部整える」という意味を込めていたのだ。何年もかけて赤字を解消するより、短期間で一気に改革したほうが、ずっと楽に立て直しができる。逆にいえば、3カ月で準備ができない会社は再生などおぼつかないのだ。
リーマン・ショック、東日本大震災と日本企業は大きく揺さぶられている。しかし、私はもう6、7年も前から「これからは、いかに伸びるかではなく、いかに生き延びるかだ」と指摘してきた。
そこで求められるのは“勝つための競争力”である。改善でもいいし、新規開発でもいいから、競合相手に勝てる商品、サービスを生み出していく。それには消費者志向に徹し、市場のニーズを掴み取っていく必要がある。そこでの成功体験は部下のモチベーションにもつながるはずだ。
そのために必要なのは最後までやり遂げる執念、熱意、そして情熱である。部門長は自分自身が覚悟を決めてマネジメントをしてほしい。もはや「できる、できない」ではない。「やるか、やらないか」が問われているのだ。
長谷川和廣
1939年生まれ。ケロッグジャパンほかの社長などを歴任した後、2000社超の企業の再生事業に参画。