「地方大学の雄」なのに…

だが、ウクライナ危機が続き、コロナ禍が明けたタイミングで、電気代や物価などが高騰していた。運営費交付金が抑制されるなか、乏しい自己資金だけで細々と改修していては、長い時間がかかってしまう。そこで学内外から寄付を集め、便器の洋式化や、床面の塗り替えなどの改修を前倒しすることにしたという。

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目標額は300万円。本当に寄付が集まるのか、ふたを開けてみなければわからなかったが、わずか2カ月間で355万円も集まった。大学側の思惑以上の成果があがったという。一方で、金沢大学といえば、規模や研究成果などをみれば、「地方大学の雄」ともいうべき存在だ。ネット上では「どれだけお金ないのよ……」などと驚きの声が広がった。

国立大学では今、いささか切なさを感じるこうした事例が、各地で起きている。

全国の大学から集まった教職員の悲鳴

朝日新聞が24年1〜2月に、国立大学の法人化年を機に実施したアンケートには、全国の学長や教職員から、「予算が足りずに学生の教育・研究環境に悪影響が出ている」と訴える声が続々と寄せられた。ふだん取材している私たちでも、「ここまでひどいのか」と驚くような、具体的な窮状を紹介するコメントも数多く届いた。

トイレについての厳しい現状については、別の大学の職員からも訴えがあった。「設備費にお金をかけられなくなり、トイレの水漏れも修繕できない」という。最先端の研究に打ち込む教員や、将来を見据えて懸命に学んでいる学生が、水漏れがするトイレを使っている姿を想像すると、いたたまれない気持ちになる。

今では、店舗や住宅でも、ほとんど見かけなくなってきた和式トイレ。だが、国立大学を訪ねると、今でも現役で使われているのを見かけることが多い。記者が23年に大学教育学会の取材をするために訪ねた大阪大学の工学部でも、一つの建物内で何カ所かのトイレを使ったが、個室はすべて和式だった。