本当にチームにとって貢献度が高いプレー

ゴールデン・グラブ投票で、守備率1位の選手に票が集まるのも「エラーは良くない」という固定観念があるからだ。いまだに日本野球では「なぜエラーしたんだ」と叱る指導者がいる。エラーしないために「腰を落とし正面でボールを捕るんだ」と指導する指導者がいる。

ベテランの評論家の中にはいまだに「ボールを片手で捕るな。遊び半分でやっているならやめろ!」と選手を叱る人もいる。

「守備率」にこだわる思想の根底は、失敗をこわがる日本独特の文化もあるのだろう。

しかし、本当にチームにとって貢献度が高いのは前述したとおり、無理目の打球にも臆せずに飛びついていく積極果敢な野手のはずだ。抜ければ絶体絶命という打球に飛びつき、あっという間にアウトにするプレーは、まさに「プロ野球の華」だといえる。

そうした守備を実現するためには、「正面で腰を落として」とは別次元の、日ごろからどんな態勢でも打球を処理するためのトレーニングが必要だ。

ドミニカ共和国などでは、少年時代から、それこそ「遊び半分」でアクロバティックなフィールディングを身に付ける。大人たちは基本が大事とは言わないのだ。いつでも、どんな球でも捕りに行ける敏捷性を身に付けようとするのだ。

メジャーを目指す村上宗隆の課題

日本でもすでに意識の高い指導者は、従来の守備の概念にとらわれず、新しい考え方で守備の指導をしている。

2019年1月に行われた「ぐんま野球フェスタ」では興味深い光景があった。当時U12日本代表監督だったプロ野球OBの仁志敏久氏(巨人→DeNA)が地元の少年野球指導者を前に「U12では、ジャンピングスローの練習をさせている」と選手たちに実演させていたのだ。指導者たちは驚きの表情でそれを見ていた。

筆者撮影
ジャンピングスローをするU-12日本代表選手。2019年ぐんま野球フェスタにて。

2025年以降、ヤクルトの村上宗隆、巨人の岡本和真とNPBを代表するスラッガーがMLBにポスティングシステムで挑戦するといわれている。

彼らにとっての課題は、大谷翔平を唯一の例外として、NPBからMLBに移籍した打者が必ず陥る「打撃の小型化」だ。そして、それとともに彼らを待ち受ける「どこを守るか?」という問題だ。

2人ともに一塁、三塁を守るが、すでに「三塁手としては通用しないだろう」という予測が出ている。しかし一塁を守るのなら相応の打撃成績が求められる。とくに、日本の内野手はMLBで「守るところがなくなる」ことが多いのだ。それだけ日米の「内野守備力の格差」は大きいのだ。

もちろんNPBの若手トップクラスの遊撃手、広島の矢野雅哉やヤクルトの長岡秀樹、オリックスの紅林弘太郎などは、MLBでも通用するのではないかと思われる。彼らにとっての課題は打撃だろう。