取材の間、終始、話のどこを切り取っても出てくるのは“現場”の2文字だった。これほどまでに、濃密なDNAが共有されている組織も珍しい。このDNAに支えられた丸紅の強さを十分に体現するのが、穀物であり、電力である。
朝田が社長に就任後、丸5年を迎える今年は、社長交代人事が予想されている。次期社長レースの最右翼と目されているのは、近年急成長を遂げる食糧部門、食品部門を率いる岡田大介常務と、商社随一の安定したビジネスモデルを1から構築した輸送部門、電力・インフラ部門、プラント産業機械部門のトップ、山添茂専務である。次期社長は、岡田か山添か、それともダークホースになるのか。
ガビロン買収を決めた“穀物マフィア”
2012年、丸紅が、約2800億円で大手穀物商社ガビロン(米国)の買収を決めた話は、世界を揺るがせた。なぜなら、世界の穀物市場を牛耳っているアングロサクソンの世界に、日本の商社、丸紅が楔を打ち込んだのだから、世界が驚くのも無理はなかった。
世界の穀物メジャーは、5社存在し、カーギル、コンチネンタルグレイン、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)、コナグラ、ブンゲである。
丸紅が買収したガビロンは、正確には「準メジャー」と呼ばれるが、穀物取扱量で見ると、カーギル(4000万トン)、ADM(3200万トン)に次いで、1700万トンを扱う米国3位の穀物商社という位置付けで、今回の買収によって、丸紅は米国2位の“巨人”に躍り出る。