海外で戦うということは、穀物メジャーと戦うことだと気づく。穀物メジャーと比べて、丸紅に何が欠けているのか。

「我々のビジネスは、穀物の価格で勝負しているように思われるでしょう。でも我々の勝敗は、A地点からB地点へ穀物を輸送する力の差で決まるんです」

米国ワシントン州カラマにあるガビロンの貯蔵施設。

岡田によれば、穀物の売買価格そのものは、“ガラス張り”だが、穀物の輸送などにかかる運賃などのロジスティックスは、“見えない”世界だという。そして、丸紅が行き着いた答えが、“用船ビジネス”への参入、つまり貨物用の船舶を時間で賃借する、タイムチャータービジネスの仕組みを構築することだった。

仕組みは、クルマに例えるとわかりやすい。単純にA地点からB地点への移動なら、タクシーを使えばいい。これは、日本の商社が行ってきたやり方である。ヘッジが完了していない……。岡田以下、穀物部の課員は24時間態勢で働いた。

英国ロンドンにあるFFA(海上運賃先物契約)市場。岡田たちは、海運会社などが船舶に運賃の変動をヘッジするためにできた、投機市場の複雑怪奇なビジネスの構造も学んでいく。日本の商社が二の足を踏んでいた時代に、岡田たちはいち早くこの世界に足を踏み入れた。

(文中敬称略)

(宇佐美雅浩=撮影)
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