中国のハイアール社が三洋電機を買収した。日本企業を買収した外資系企業が取るべきスタンスを、日本特有の経営と従業員の関係から紐解く。
米国におけるM&Aの半分は失敗?
このところ、人々の注目をひくような合併案件が立て続けに報道されている。一つは、日立製作所と三菱重工業の合併である。少し前に発表された新日鉄と住友金属の合併と同様、超巨大企業同士がさらなる規模のメリットを求めた合併である。これはスケールの大きさが注目をひいている。もう一つは、三洋電機の白物事業のハイアールへの売却である。かつての一流企業が中国企業の傘下にはいるという意味で注目されている案件だ。
日本のビジネスマンの間では、後者の案件への関心のほうがより強いかもしれない。中国の企業に買収された日本企業とその従業員は一体どういう運命になるのかということが、ビジネスマンの関心をひくからである。
これまで中国企業による買収がなかったわけではないが、買収対象となっていたのは比較的規模の小さい企業が多かった。これに対して三洋は、パナソニックに買収されたとはいえ、かつては一部上場の大企業である。しかも買収側のハイアールが特異な経営スタイルを持っていることを知っていて、このような経営スタイルが三洋にも適用されるのだろうかということに関心を持っているビジネスマンが多い。
関心が高まるのには、ほかの理由もある。電機・電子、機械などの業種で中国の政府系ファンドの持ち株比率がじわじわと上昇している。わが社でも、いずれこのようなことが起こるのではないかと危惧するビジネスマンが少なくないのである。
米国では企業の合併や買収が活発に行われてきた。日本もその方向へ動いているようだ。日本政府もその方向を容認している。それどころか、円高対策の一環として日本企業による海外企業の買収を日本政府は期待している。しかし、M&Aは、為替が有利だからというような単純な理由で行われるべきものではない。