違いはポテンシャルではなく、心構えと日々の習慣にある。熾烈なグローバル競争が激化する中、成果を出す人の特徴とは? アンケート調査が示す、歴然たる結果に激震が走る!
孫子の兵法に「巧遅は拙速に如かず」という言葉がある。場合によっては、ぐずぐずしているより、上手でなくとも、迅速に物事を進めるべきだということだ。ビジネスは今や「巧遅拙速」の世界となり、スピード優先のアウトプットを行って競合相手より一歩先んじることが力の差となって表れる時代となった。海外事業で相次いで大型のM&Aに踏み切ったLIXILグループ社長の藤森義明氏は決断のスピードの必要性を次のように言う。
「経営者としての私は『即断即決』を旨としている。M&Aのような重大案件の場合、実現までには相応の時間がかかる。しかし基本的な方針を固めたら、決断は速い。なぜなら、外部環境は刻々と変わる。決断しないまま状況が変化すると、変化した状況に合わせて、また検討しなおすことになる。そこでもし『とりあえず様子を見よう』と先送りすれば、永遠に様子見をしたまま何もしないことになりかねない。現状と向き合い、その時点でベストな判断を下すのが経営者だ。そのことに躊躇があってはならないと思う」(プレジデント誌14/2.3)
では即断即決を実現するためには日ごろどのような準備をしておけばいいのだろうか。藤森氏は続けていう。
「私はふだん、案件の処理に迷うことはほとんどない。それは常に自社の戦略を思い描き、その枠組みの中で何をどうすればいいかを考え抜いているからだ。その場で即興的に決めるのではなく、あらかじめ思考訓練を行っているのである」(同)先行企業に競合企業がすぐ追随し、激化する競争の時代においては、常に一歩先に踏み出し続けない限り、世界を相手に勝ち抜くことは不可能だ。そのためには企画の段階で完璧である必要はなく、アウトプットを速くすることが求められていると丸紅会長の朝田照男氏は言う。
「私は常々『80点の企画書で行動しろ』と言っている。80点程度まで企画を詰めて、やるかどうか決断するのだ。あとは走りながら、顧客や取引先と一緒に100点に近づける。最初から100点満点の企画はありえない。総合商社のビジネスは、完壁主義にこだわっていたらライバルに先を越されてしまう。80点自体も自分一人でできるわけがなく、現場を回って80点に持っていくのだ」(12/4.16)
1975年、日商岩井(現・双日)に入社。86年、日本GEに転職。会長を経て、2011年に住生活グループ(現・LIXILグループ)社長兼CEOに就任。