筆者も同じ過ちを犯した
兵庫県知事選挙の最中となる11月13日筆者は、神戸市三宮で行われていた立花孝志候補の選挙演説会場を訪れ、集まっていた聴衆を前に謝罪スピーチを行った。
そもそもこの謝罪スピーチだが、これは斎藤知事と兵庫県の有権者に対してのものだった。
実を言うと筆者はある時点まで、斎藤知事を巡る「おねだり疑惑」や「パワハラ疑惑」、さらには兵庫県の元県民局長が自殺に追い込まれた原因が斎藤知事にあるとする問題については、事実であるということを前提にメディアで発言したり、論評してきた。そしてその根拠となっていたのが、今となっては恥ずかしい話だが、新聞などのオールドメディアの報道がベースだったのである(しかしだからといって、筆者としてはそうしたオールドメディアに責任を転嫁するつもりは毛頭ない。むしろほとんど独自取材すること無しに発言や論評してきた筆者の手抜きや不明を大いに恥じている)。
「パワハラ」「おねだり」の根拠はあまりにも薄かった
しかしそうした発言や論評をするたびごとに、筆者の事務所のメールアドレスには兵庫県の有権者と思しき数多くの読者や視聴者から、疑惑を否定する情報提供が数多く寄せられるようになったのである。気になった筆者は、改めて一連の疑惑を取材してみることにした。すると疑惑の裏付けとなる根拠があまりにも薄いことに気がつかされたのである。
例えば、斎藤知事によるパワハラやおねだり(外部からの贈答品の受け取り)があった、とする具体的な根拠とされてきたのは、百条委員会が兵庫県職員に対して実施した各種アンケートの結果だ。ネットで回答したものに関して言えば、「知事のパワーハラスメント」については、目撃(経験)等により実際に知っている、と答えた件数が71件(全回答件数の3.41%)。また、目撃(経験)等により実際に知っている人から聞いた、と答えた件数が316件(全回答件数の15.1%)となっている。
これまでマスコミを含め世の中一般的には、こうしたアンケート結果を持ってして斎藤知事のパワハラはあった、と断定していたのである。
ところが百条委員会はこのアンケート結果について、報告書に以下のように明記しているのだ。「回答内容について、委員会としては『個々の回答内容の真偽は今後の調査によって明らかにすべきもので、回答内容をもって事実確定としない』と認識しているので、取り扱いにはご注意ください」と。
つまり百条委員会は、まだ最終的な結論を出すに至っておらず、従ってパワハラについてもおねだりに関して何一つ真相は明らかになっていないのだ。この段階で斎藤知事の責任を追求するというのはナンセンスだ。