クリエイティブとは「受け手の心に響く」こと

【澤円】最後に、いまyutoriは「若者帝国をつくる」というビジョンを打ち出していますよね。ある記事では、「若い子の『好き』と『熱狂』が溢れ、それを商売にし続ける」と述べておられますが、このビジョンについてぜひお聞かせください。

【片石貴展】わたしは、クリエイティブであることは、なにかをつくるのが上手だったり巧みだったりすることとはあまり関係がないと思っています。それよりも大切なのは、受け手の「心に響く」ことです。

例えると、足が遅い人でも、必死に努力してフルマラソンを走り切れば、心を打たれますよね? そんな感覚に近いかもしれません。もちろんビジネスですから、テクノロジーなどを活用し効率を追求する必要はあります。でも、その結果つくったものが受け手の心を打たなければ、それはクリエイティブとはいえないでしょう。

では、なにがクリエイティビティーを生み出すのかといえば、やはり、つくり手が持つ初期衝動のエネルギーです。そのうえで、ひとつの会社で100という日本一のブランド数を持つのなら、それだけ多種多様な若者の「好き」と「熱狂」が渦巻く特殊な会社空間であるはずです。

そんなファッションを軸にしたクリエイティブで、若者たちが熱狂を生み出し続ける空間を、「若者帝国」と名づけてビジョンにしたというわけです。

クレヨンしんちゃんの映画に発想を得た「若者帝国」

【澤円】それにしても、「若者」+「帝国」とはすごいパワーワードですね。

【片石貴展】ちょっと厨二病っぽいうたい文句ですよね(笑)。でも、この言葉が多くの若者たちに、高揚感を伴って広がっていくといいなと思っています。

実はこれ、映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲』からインスピレーションを受けているんです。大人だけの楽園「オトナ帝国」の建設をたくらむ組織と、しんちゃんたちが対決する筋書きですが、あの映画が大好きで。むしろ「オトナ帝国」側に溢れる、20世紀の匂いや思想の方に共感していたのですが、「若者帝国」を目標としました。

【澤円】素敵ですね。わたしは基本的に創造性に満ちた起業家の人たちを、そのなかでも「うわ、よくやるなあ!」と感じる人に会うと、とても応援したい気持ちになります。正直なところ、アパレル業界って大変ではないですか?

【片石貴展】それはもう、めちゃくちゃ大変ですね……(苦笑)。

【澤円】「うわ、よくやるなあ!」という姿と勢いのまま、今後も挑戦し続けてください。応援しています。

(構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム) 文=辻本圭介)
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