北上次郎さんが今回紹介した本
●働く者たちのドリームチーム
『ルーズヴェルト・ゲーム』池井戸潤 講談社
かつての社会人野球名門チーム。監督に見捨てられ、主力選手も去った。会社は存亡の危機、チームは廃部の瀬戸際にある。社員一丸となった奇跡の逆転劇がはじまる。「今日でこそ成り立つ痛快な社会人野球小説」。
●命を賭して記録を残した男たち
『恐るべき空白』アラン・ムーアヘッド 早川書房
知られざるオーストラリア内陸部を行く探検隊。過酷な自然が容赦なく牙をむき、隊員は生命を脅かされながら記録を残した。「世界にはまだ埋もれたままの記録があるかもしれないという想像をかきたてます」。
●東北の民と朝廷との戦いを描く壮大な物語
『火怨』高橋克彦 講談社文庫
「一気に読みました。東北の方たちがこんなに素晴らしい小説を持っているなんて、うらやましいかぎりです。誇りを持って立ち上がり、戦う姿勢に圧倒。目頭が熱くなり、まさに血が脈打つ小説」。
●弱小チームが知っていく「勝つ」楽しさ
『監督』海老沢泰久 文春文庫
常勝ジャイアンツに激しい闘志を持って挑む広岡監督。選手の意識を変え、日本一へと導く。「子どものころから広岡のファン。派手な長嶋の横でインテリの広岡が戸惑ったような顔をしていたのが忘れられない」。
●ジュニア文庫から誕生した骨太の小説
『図南の翼』小野不由美 講談社文庫
20年にわたって書きつがれている人気シリーズの1冊。古代中国思想を基盤にした異世界ファンタジー小説。アニメ化もされた。「ファンタジーとはいえ私が苦手な魔法が登場しないので、入っていけました」。
1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年4月に椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊して発行人を務める。創刊当時から書評を担当して、ペンネームの北上次郎名で『冒険小説論──100年の変遷』(日本推理作家協会賞受賞作全集)、『ベストミステリー大全』など多くの著作を発表する。趣味は、競馬。