大谷翔平は“損得抜きで全力投球だった”

「憧れるのを、やめましょう」
「憧れてしまったら、超えられないので。僕らはきょうトップになるために来たので。きょう1日だけは、彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう」

これはまさに原点でものを見ている人の言葉です。原点に従って努力することで得られるものは、潜在能力を発揮するチャンスだけではありません。そういう人は誰からも愛され、運もよくなっていくことは明らかでしょう。

人のためになる原点に従って、損得抜きで全力投球する。全力投球を要する目標を掲げることもまた大切です。

30年前の医局での出来事は、絶対に患者さんを助けるという原点の下、桁違いの目標を共有したことがよかったのです。

かくいう私がこの大切さを痛感したきっかけは、3年前、82歳から立て続けに重病を患ったことでした。初めに心筋梗塞、次いで鬱血性心不全、腎不全、前立腺がん、糖尿病、そして眼底網膜出血。一度は心臓が止まり、なんとか意識が回復しました。

ところが、自分の能力の低下に驚かされました。ボールを投げれば的の下に当たる、字を書けばどことなく曲がっている、風景を絵に描いても木々の枝が寂しくなる……。

初めは病気と年齢のせいと諦めかけましたが、これまでの体験と研究を振り返る中で、それは思い込みだと気を取り直しました。そして、「自己保存の本能を克服し、潜在能力の高め方をお伝えしたい」というように、人のために生きたいという原点に従って全力で仕事を始めると、衰えたと思った能力が随分回復してきました。これは新たな発見でした。

「いい年だからできない」は禁句

先に述べたように、「いい年だからできない」「年を取った」は潜在能力を消す禁句なのです。

私の体験を通しても言えるのは、脳は前進を求めているということです。しかしそのためには、こころを鍛えないといけません。

こころとは、脳に入った情報に気持ちが動き、感情が加わってから生まれてくるものです。本書でご紹介した言葉や考え方で美しい本能を引き出し、ダイナミック・センターコアを絶えずプラスに機能させる。それがこころを鍛える、こころを磨くということです。

写真=iStock.com/Tomwang112
※写真はイメージです

このことは、何も個人にとって重要なだけではありません。

来る2040年代、人口減少に加えてAIが現在より格段に発達し、イノベーションの時代が訪れると言われる中、次世代を担う子どもたちを、頭がよく誰からも愛され、運の強い素晴らしい子に育てることは急務です。そのための潜在能力を引き出す育脳がますます重要になってくるでしょう。変化の激しい時代ですが、失敗を恐れていては決して前進できません。失敗は当然と考え、原点に立ち返り、失敗をカバーするほどの全力投球をすれば潜在能力は高まっていきます。