立ち直るための5つのステップ

【澤円】中島さんは、グリーフから立ち直るための5つのステップを提示されています。それぞれのステップがどのようなものなのか教えてください。

【中島輝】①ショック期、②喪失認識期、③引きこもり期、④再生準備期、⑤再生期――が、グリーフに陥った人がたどる5つのステップです。順を追って解説しましょう。

①ショック期

人によって期間の長さに違いはありますが、大きなショックを受けて心がパニック状態となり、どうしていいかわからなくなります。

②喪失認識期

「あの人はもういなくなってしまったんだ」と、徐々に事実を受け入れられるようになりますが、このときにも強い悲しみを感じています。

③引きこもり期

悲しみによって、「外に出てアグレッシブに行動しよう」「ポジティブに考えて前に進もう」とは思えず、「ああすればよかった」「こうすればよかった」と自分を責め、引きこもります。

④再生準備期

ようやく立ち直りに向かって徐々に前進し始めます。時間とともに、自分を責めて引きこもる状態を脱し、「自分を責めても事実は変えられないのだから、前を向こう」と、新しいことや未来に目を向ける心のゆとりが生まれます。

⑤再生期

「失ってしまったものはしょうがない」と事実をようやく受け止め、「これからどう生きていこうか」と新しい想像ができるようになり、グリーフから立ち直ることができます。

写真=石塚雅人
中島輝さん

そっと見守ったほうがいいタイミングもある

【澤円】こうして明確にステップを示されると、個人差こそあれ、多くの人がこのステップを踏んで徐々に立ち直っているのではないかと考えられます。このようなステップがあると知っておくことだけでも、グリーフへの対応が有効なものになりそうです。

【中島輝】そうですね。「自分はいまどのような状態なのか」「そうか、引きこもり期なのだから、自分を責めてしまうのも当然なんだ」と客観的に考えられるようになりますから、完全にグリーフに飲み込まれることを避けることができるでしょう。

そして、このステップを知っていることで、グリーフを感じている他者に対しても適切な働きかけができるようになります。例えば、引きこもり期にある人の心には、「ポジティブに前を向こう」といった言葉はまず響きません。でも、5つのステップを知っておくことで、「引きこもり期なのだから、いまはそっと見守っておこう」というように、ステップごとの適切な寄り添い方が見えてくるのです。