「すべて各駅=運送費の削減」にはならない
先に試算したように、仮に京葉線の営業利益が88億5229万円だったとしよう。2019年度にJR東日本が支払った京葉線の貸付料は246億3600万円であったから、仮に京葉線の営業利益だけでまかなおうとすると157億8371万円が不足する。
JR東日本に聞いたところ、この貸付料は京葉線の営業収支とは関係なく、同社全体で負担するらしいとのことであった。それでもJR東日本が京葉線の経営状態を判別する際に考慮すべき金額である点は間違いない。貸付料の存在は仕方がないとしても、京葉線の営業利益を可能な限り増やそうと考えるのは自然なことだと言える。
京葉線の抱えた財政事情がこの路線から快速や通勤快速を減らしたり廃止にしようとする動機となるのかは筆者はわからない。仮にすべての列車を各駅停車にしたとして、列車の種類が単純化されて運送費がいくぶんか節減できるかというとそうでもないと筆者は考える。
逆に余分な加速、減速が増えるために運転費が増加する可能性もあるだろう。
それに、東京駅~蘇我駅間で快速では標準で41分で到達できるところ、各駅停車では49分が標準となるので、8分延びた分の人件費を考慮すると運送費の削減にはつながらないかもしれない。ともあれ、今回の京葉線での出来事を収支の面から説明することは筆者には困難だ。
類似路線を比較してわかること
最後となるが、今回の問題が報じられた際、「京葉線には快速は不要だ」とか「快速の減少に文句を言うのぜいたくだ」との心ない意見が聞かれた。という次第で首都圏の他の通勤路線と比較してみよう。京葉線沿線の利用者や関係者の言い分は間違っているのかどうかがわかる。
次項の図表4に挙げたのは同じ線路上を異なる種類の列車が走っている路線で、京葉線東京駅~蘇我駅間43.0キロメートルに近い区間を取り上げた。
各線とも停車駅の少ない列車はいろいろとあるなか、1日1本という具合に極端に少ないものではない限り、基本的には最も停車駅の少ない列車を対象としている。