タイ人に大ウケ! 100店舗以上の飲食店へ納入

このように焼き方と土壌づくりを極め、最高糖度78度を記録したSAZANKAグループの焼き芋は、焼き芋ブームの波にも乗り、販売を伸ばしていった。

2020年からは「さつまいも博」の発起人の一人となり、全国の作り手と売り手と買い手の三者が出会い、さつまいもを通じて楽しめるような、三方よしのイベントを始めた。その中で「さつまいもの品評会」や「日本さつまいもサミット」、さらには焼き芋日本一を決める「全国やきいもグランプリ」を開催して好評を博した。(SAZANKAは2023年に、さつまいも・オブ・ザ・イヤー 紅はるか部門 日本一を獲得)

多くの飲食業が苦戦したコロナ禍では、人気ユーチューバーのヒカキンが、自身のチャンネルで「ウーバーイーツで高級焼き芋食べたら美味すぎて気絶☆」と紹介。すごい勢いで売れ、知名度もぐんと高まった。

自分たちだけが得をするのは「なんか違う」

そうしてビジネスが軌道に乗った2022年、菅生さんは経営する焼き鳥などの飲食店事業を全て売却し、「焼き芋一本で勝負する」と決めたのだ。ただ、自分だけ儲ければいいという発想はない。

写真提供=SAZANKA
#2023年のさつまいも博で表彰された、サザンカファームの生産者たち

「切磋琢磨し合える仲間とのコミュニティを作ることで、焼き芋の魅力をもっと多くの人に届けていきたいです。昨年は、各地の生産・販売仲間を宮崎に呼んで、焼き芋ツアーを実施しました。SAZANKAグループの農場と工場も見学してもらいました。私たち作り手や売り手が、創意工夫や学びを続けることが大切だと考えています」

現在の経営状況はどうなっているのか。

「2023年度のさつまいもの収穫量は250トン、グループ全体の売り上げは約3億円です。工場は、第3工場まで増えました。おかげさまで、生産すると完売するので、生産量を上げるほどに売り上げが伸びる状態ですね。販売は、自社のオンラインサイトや催事でのBtoCだけでなく、大手外食チェーンやレストラン、TSUTAYA(一部)にも焼き芋スイーツとして販売しています」

さらに菅生さんは飲食店経営のキャリアを生かし、焼き芋を用いたメニュー開発などのコンサルティングにも積極的だ。原価計算からメニューの提案までトータルで行えるのが強みだという。このスタイルが奏功したのが、海外輸出だ。

「知り合いの紹介で、2021年からタイ向けに焼き芋を輸出しています。もともとタイ人の多くは甘いモノが大好きな上に、日本食が広く普及しています。デザートはもちろん、天ぷらや串揚げ、ドリンクといったメニュー提案を行うことで、取引する飲食店は100を超えました」

写真提供=SAZANKA
#バンコクの高級寿司店「Sushi Yorokobu」で提供されるSAZANKAの焼き芋スイーツ

菅生さんは、欧米の日本食レストランにも大きな商機があると話す。

「多くの日本食レストランでは、料理に対してデザートのバリエーションが、驚くほど少ないと感じます。評判のレストランでも、なぜかデザートは出来合いの餅菓子やアイスクリームといったケースが見られます。有機栽培で皮まで安心して食べられるだけでなく、圧倒的に甘いうちの焼き芋をデザートに使うことで、メニューの価値をワンランク上げていただければと思います」

近い将来の売上目標は現在の2倍の6億円。「焼き芋を通じて、日本の農産物の魅力を世界に届け、日本の農産物に競争力があることを示したいんです」と力を込める。

江戸時代に爆発的に普及し、日本が誇る伝統のスイーツと言える焼き芋。菅生さんにとって、その伸びしろは令和の今も無限大だ。

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