「そうですね」の威力

例えば、その日の天気や状況に触れる方法です。「今日は暑いですね」「急に雨が降り出しましたね。傘はお持ちでしたか」「最寄りの○○駅からの道がわかりづらかったですね。皆さん迷わず来ることができましたか」など、この場に来るまでの状況について語ります。タモリ氏が観客から「そうですね」という声を引き出していたように、聞き手から「そうそう、そうだった」と同意を引き出すような内容を語りかけます。

「今日は暑いですね。暑い中ご参加いただきありがとうございます」のように、前述の感謝を合わせて伝えるのもよいでしょう。

あなたの前にも話し手がいた場合、前の人の話を受けるのもお勧めです。

「いまの○○さんの話は素晴らしかったですね。聞きながら私も○○だと思いました」「さきほどの○○についてのお話を聞きながら、私も一生懸命メモをとりました」などと今観客が思っているような気持ちを代弁して同じ気持ちになることです。そうすると同調効果が生まれ、話し手と聞き手に一体感が生まれます。

孫正義氏のうまい「前フリ」

言語スキル④ 予言する「前フリ」で聞き手の気持ちをコントロール

最初の部分で、話の締めとして伝えるべきは「予言」です。「この話を聞いた後、あなたはこうなります」と未来の姿を伝えることで、話を聞きたいという気持ちが高まります。

心理学的にいうと予言は聞き手に「暗示」をかけることになります。聞き手みずから無意識のうちに予言された内容をするように誘導することができるのです。

例えば、何か説明をする場であれば「説明後は、○○についてよりわかるようになります」と聞き手が理解した姿を予言します。「この話を聞いた後には、○○という気持ちになるはずです」「話が終わる頃には○○をしたくなるでしょう」など話の後に聞き手にそうあってほしい姿を先に伝えます。

「前回話を聞いてくださった方々からも○○という感想をいただきました」「これまでもアンケートで○○という声をいただいています」など事例や根拠をデータで示すと、さらに説得力が増します。

ソフトバンク最大規模のイベント「SoftBank World」(2023年10月4日)。ソフトバンク創業者の孫正義氏が「AGIを中心とした新たな世界へ」というテーマで60分のプレゼンを行いました。その冒頭でも予言が行われていました。

孫正義(写真=Masaru Kamikura/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons