横並びの地方自治体と相性がとてもいい

生成AIソフトは、人件費がかからない。疲れず二四時間はたらく。ひとつのソフトが組織全体の(つまり、数百人分の)業務をカヴァーする。過労でへばっている中央省庁の職員も、ひと息つけるだろう。そして、本来の創造的な業務に取り組めるだろう。

中央省庁と違って、地方行政は、生成AI系ソフトと相性がいい。すぐ普及するだろうし、その効果は絶大だ。

地方自治体は、都道府県も市町村も、全国で同じ業務を行なっていて、事業所の数が多い。一箇所でソフトを開発すれば、すべての自治体で採用できる。行政裁量の余地が少なく法令どおりに実施すればよい業務を、効率よく正確に進められる。

地方自治体は、職員不足に悩んでいる。そのため行政サーヴィスに支障が出る。職員を増員しようにも財源が厳しい。法令はしょっちゅう変わるので、勉強が欠かせない。責任も重い。生成AI系の行政ソフトが導入されて常時、関係法令や職務手順がアップデートされるなら、とても助かる。少ない人員で、いま以上の行政サーヴィスが提供できるはずだ。

だから、特に地方行政では、生成AI系ソフトの導入は、急速に進むはずである二〇二三年一二月には、法務省が日本の法律の条文の英訳を、生成AIを用いて試行してみるというニュースがあった。それまでは英訳に二年間ぐらいかかっていたという。そういうことはさっさと進めるべきだ。生成AIの翻訳機能を常備すれば、外国人が日本に来た場合の行政サーヴィスをぐんと向上させることができる。

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これ以上遅れる前に官民で動くべき

生成AI系のソフトは、各国でつぎつぎ行政に組み込まれ、業務を改善させていく。日本よりずっと先に、行政革命を進める国が続出する。

すると日本の行政も、重い腰をあげることになる。外国にできることが、なんで日本にできない、という非難の声が高まるからだ。

そんな情けないことになるまえに、これをチャンスととらえるべき。世界中の国々で生成AI系の行政ソフトが採用されるのなら、日本のソフト産業にも十分出番がある。世界の国々は、ローカルな自国語で、行政を行なっているところが大部分だ。日本語で行政を行なっている日本と同じように、英語やスペイン語やアラビア語や……のような、マーケットの大きい言語から切り離されている。手作りで、自国向けの行政ソフトを開発しなければならない。

そこを、日本のソフト産業が手伝える。日本の行政ルールは、西側のやり方を踏まえているが、西側ルールそのままではない。微妙な調整を加えている。世界の数ある国々の行政ルールも、そうした手加減を必要としている場合がある。その機微を、日本のソフト産業は、西側諸国の企業よりもうまくすくい上げることができそうだ。