「脱ハンコ」は日本のダイナミズムを高めるのか

現在、河野太郎行政改革担当相が、行政手続きの「脱ハンコ」に向けて取り組んでいる。同大臣は、9割以上の行政手続きでハンコの使用を廃止できると述べた。政府が時代遅れの押印文化の慣習を改め、新しい組織文化を社会に根付かせようとすることは、社会の古いシステムを改革する意味でとても重要だ。

グループインタビューに答える河野太郎行政改革担当相=2020年10月1日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
グループインタビューに答える河野太郎行政改革担当相=2020年10月1日、東京都千代田区

ある意味、押印文化はわが国社会の象徴だ。それは、人々の行動や意思決定に無視できない影響を与えてきた。企業などでは役職の低い者から順に右から左へ印鑑を押し、組織的な合意を形成する。ただし、押印による合意形成の結果として責任の所在が曖昧だ。

テレビドラマで、銀行経営などに問題が発生した際に組織のトップではなく、ミドルや末端が責められるのは、そうした人々の価値観、生き方を端的に示す。

そう考えると、政府が率先して行政手続き上の押印を廃止しようとしていることは重要な意味を持つ。何事も、新しい取り組みを進めるためには強力なリーダーシップと具体的な取り組み策の明示が欠かせない。押印廃止など河野大臣の行政改革を皮切りに、わが国に新しい文化が根付き、社会全体のダイナミズムが高まることを期待する。