疲労感や自己犠牲を減らし組織の成果を上げるには

こうして、自分らしく活躍したいと思っていた人たちも、知らず知らずのうちに、環境変化の渦に飲み込まれ、自分を見失いがちです。

自分を見失っているかどうかは、次の直球の質問に答えられるかどうかでわかります。

「あなたにとって、自分らしさとは何ですか」

この質問のバリエーションとして、こう聞いてもよいでしょう。

「あなたが、最も大事にしている価値観は何ですか」

こうした質問をされて、答えに詰まってしまう方もいるかもしれません。

こうした問いに答えるには、自分自身を内省する必要があります。この内省に役立つのが、今世界的に注目されている「セルフ・コンパッション」のアプローチです。

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セルフ・コンパッションとは、ひと言で言えば、「自分にやさしくすること」。そうすることで、自分自身で心身を整え、安心感を得て、自信をもって前に進むことができます。セルフ・コンパッションの技術を身につけることで、疲弊感や自己犠牲感が減り、自分、チーム、そして組織の成果を効果的に生み出すことができます。

そして、このセルフ・コンパッションを実践することが、自分らしさを発揮することにつながるのです。

自分らしさを発揮するための「3つのプロセス」

自分らしさを発揮するためには、どうしたらいいのでしょうか。先に、結論からお伝えしましょう。

プロセス① つらい経験を受け入れる
プロセス② 価値観を見出す
プロセス③ 自分の価値観を体現する

このプロセスを図解すると、次の図のようになります。プロセス①から③にかけて、谷を下り、そこから上がってくる、U字の軌跡をたどります。

まずは、全体像を把握していただきたいので、早速、各プロセスの概要を紹介します。

<プロセス① つらい経験を受け入れる>

最初のプロセスでは、過去のつらい経験を思い出し、そのときに何が起きたのか、どんな気持ちになったのかを振り返ります。

自分らしさや価値観といった、ポジティブなものを発見したいのに、どうして、ネガティブな経験を振り返るのかと思われた方もいるかもしれません。「できれば、そんな経験思い出したくないよ」という声も聞こえてきそうです。

しかし、よく考えてみれば、私たちはポジティブな経験にくらべて、ネガティブな経験のほうが心に刻まれやすい性質をもっています。つらい経験は、人格の深いところにまで影響を及ぼし、その人らしさを形づくっていることが多いのです。そのうえ、普段はつらい経験を深く振り返ることをなかなかしません。

だからこそ、自分のつらい経験と、あえて向き合う時間をとる価値があるのです。