「顧問を任せるなら男性に」というジェンダーバイアス

また、女性弁護士の平均収入が上がらない第二の要因として、男性弁護士のほうが「顧問契約」を取りやすい、という事情があるという。

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法律事務所が引き受ける仕事をざっくり大別すると、「内容によって報酬額の決まっている都度払いの案件」と、月単位の定額報酬で引き受ける「顧問契約」とがある。

「弁護士に依頼する」というときにイメージする「なんらかのトラブルに巻き込まれて弁護士に相談する・代理人になってもらう」というのは、前者だ。

わたしはいま実際に離婚調停中なのだが、弁護士に代理人になってもらう際に着手金○万円、離婚調停を起こすと○万円、さらに訴訟に進めば○万円、養育費が相手方から振り込まれればその○%と都度、弁護士への支払いが発生する。

スムーズに進めばよいが、案件によっては膠着状態となり、報酬はほとんど増えないのに一案件にずっと関わりつづける、ということもありうる。事実、わたしの離婚案件はそうなりつつあり、弁護士の先生に申し訳なさを覚えている(調停1回につきいくら、など出張費の取り決めのある事務所もある)。

出典=弁護士ドットコム「法曹界のジェンダーギャップの実態調査

法律事務所の代表は父親から息子へ世襲で引き継がれる

一方で顧問契約というのは、いわゆる「定額制」だ。顧問料に応じてカバーする内容が変わり、カバー範囲が広いほど高額となる。弁護士にとっては安定収入の土台となる。

ある程度の規模のビジネスを行う法人・個人は顧問弁護士を迎えるのが一般的だが、その際に企業側が「やっぱり顧問になってもらう先生は、男性弁護士のほうがよい」と「なんとなく」という理由で女性より男性を選好する傾向があるのだという。まさにジェンダーバイアスだ。

なお、小規模な法律事務所の場合には、先代弁護士の子どもが弁護士になれば、事務所が抱えていた中小企業の法人顧問契約を、世襲でそのまま引き継ぐことが多いという。それも父親から息子へ、というパターンが多いそうだ。

実はこれが大きな壁で、「女性弁護士は企業の顧問弁護士に選ばれにくい」ことによって固定収入が見込めず、不安定な案件ベースの仕事をメインに引き受けざるをえないのだという。

だが、案件ごとの仕事では、料金体系にもよるが、長引いても収入はさほど増えず、労働の時間単価は下がっていく。