「安倍批判」だけが存在感を示すやり方だった
――安倍総理や麻生財務相は、遺書には新しい事実がないから再調査はしないと言っていますが。
「だってあそこに名前が初登場の人もいるし、明確に『佐川局長の指示です』と書いてあります。これも新しい事実ですよね。それに対して、安倍総理や麻生大臣が、新しい事実はないとおっしゃることではない」
今読んでも、石破氏の安倍政権批判は鋭い。それがなぜ?
私は、安倍首相という強い権力者がいたために、それを批判する石破氏が輝いたのではないかと思っている。
民主党政権時代、野党自民党の総裁選に出馬するも、安倍晋三氏に敗れた。
その後、民主党政権が瓦解し、自民党が政権党に復帰した第2次安倍政権で、石破氏は幹事長に任命されたが、特定秘密保護法案に反対している市民団体のデモ活動を、「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」と発言し、物議を醸した。
その後、石破氏は自身のブログで「テロ発言」を撤回して謝罪しているが、この頃は、安倍首相を補佐する役目に徹していた時期であった。
しかし安倍政権が長期にわたるにつれ、かつては総裁選で争ったライバルだった安倍氏が遠く仰ぎ見る存在になり、反主流派の一人として冷や飯を食う中で、存在感を示すためには安倍政権批判をすることだと考えたのではないか。
その後も2度、総裁選に出馬するが志を果たせなかった。
ついに掴んだ政権は“長老”たちに握られている
今回の総裁選出馬は自身もこれが最後だと公言していた。党内基盤が軟弱で議員たちの支持の少ない石破氏には、菅義偉元首相や岸田文雄前首相の支援が不可欠であった。
そのために総裁就任直後から自説を引っ込め、戦後最速の解散・総選挙に踏み切り、世論に押されて裏金問題議員12人の公認を認めないと短時間で決めた。
しかし、石破首相は朝日新聞の単独インタビューに応じて、「自民党派閥の裏金問題で党内処分を受けた前衆院議員が今回の衆院選で当選した場合、選挙後に追加公認した上で、世論の動向を見つつ、政府・党の役職への起用を『適材適所』で検討する考えを示唆した」(朝日新聞デジタル10月13日 4:00)のである。
どうしてこう首尾一貫しない発言を石破首相は繰り返すのか。その背景には菅氏と岸田氏の“圧力”があり、さらに、両氏と関係が良好で、公明党とも太いパイプを持つ森山裕幹事長の存在があると、週刊現代(10月19日号)は見ている。
「国対委員長には旧森山派で事務総長を務めていた子分の坂本哲志さんが就任しました。選対委員長には進次郎さんが就任したものの、選挙を仕切るのは幹事長の仕事。森山さんが選対と国対を兼ねているようなものです」(政治部記者)