「パソコンが使える若手」と「パソコンが使えない中高年」

仕事のやり方が大きく変わり始めたのは、1995年頃からパソコンが急速に普及し始めたことが大きい。

最初は1985年くらいから徐々に普及し始めたオアシスや文豪、Rupoのようなワープロが手書き書類を駆逐し始めたが、1990年代に入ると計算はそろばんや電卓から、MultiplanやLotus1-2-3といった表計算ソフト置き換わり、ワープロもパソコンで動作する一太郎やWordが広く使われるようになった。

そうなると、パソコンが使えることが仕事では重要なスキルとなって、日本人にはなじみのなかったキーボードでの文字入力が当たり前のスキルとして要求されるようになった。

その結果、この時期のホワイトカラーは、パソコンが使える若手とパソコンが使えない中高年に分断されていった。

大学教育でもそうした状況に呼応し、1990年頃から2000年代初頭までに多くの大学で情報系学部が新設された。

今のデータサイエンスブームと同じような状況が20年前にもあったわけだ。

そして1995年頃社会に出た若手は、30年経った今では50代となり、いまやホワイトカラーでパソコンが使えない人はほとんど見なくなった。

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日本社会はパソコンが使えないからといって従業員を解雇することなく(ただ再教育もあまりやらなかったが)、30年かけて情報化時代に適応してきたということになる。

データサイエンスのスキルが必要な職種は広がっていく

2024年の今、起きていることはパソコンが使えるのは当たり前で、さらにデータサイエンスとプログラミングの能力が要求されるようになってきたことだ。

もちろん、データサイエンスやプログラミングのスキルは、パソコンのように社会人全員に必要とされるものではないが、必要とされる職種や範囲はどんどん広がっていくだろう。

データサイエンスのスキルが必要とされているのには、インターネットの普及で扱えるデータが増えた、ということがある。たとえば、自社のウェブサイトにどこからアクセスがあり、どの画面がどのくらい見られたか、といったいわゆるビックデータと呼ばれるログデータが容易に取得できるようになり、分析が必要とされている。

さらに、基幹システムに蓄積されている顧客データや商品データ、売上データといった古くから存在していたデータを分析する要求も高まっている。

そうした背景には、DXへの取り組みが多くの企業でなされていることがある。

DXとは、簡単に言えば、「データとITを使いこなす」ことだから、これまであまりやってこなかったデータ分析に多くの企業が積極的に取り組み始めた、ということだ。