「BAT」を中心に採用人数が減少している

中国のIT先端分野では、民間企業経営者の高成長への野心、政府の産業補助金などの支援もあり、アリババ、テンセント、バイドゥなどのプラットフォーマーの成長は加速した。2億人のギグワーカーを生み出したとの推計もある。IT化の推進で中国の雇用・所得機会は増大した。

写真=iStock.com/V2images
※写真はイメージです

しかし、2021年以降、中国政府は、IT先端企業への規制を実施し共同富裕策も進めた。その結果、アリババなどはリストラを余儀なくされた。2023年9月の米外交問題評議会の調査によると、大卒者増加の一方で2021年あたりから、中国サービスセクターでの雇用者数は減少が鮮明化した。

増加傾向の大卒者を、民間のIT先端企業などが吸収することは難しくなった。そのため、「一生懸命努力を重ねても、就業の機会を見つけることは難しい」と考える若年層は増えたはずだ。

雇用ミスマッチの一つの受け皿として、青年養老院に対する関心は上昇したのだろう。国慶節の連休が近づいた9月25日、雇用問題の解決に向けて政府は第3次産業などでの雇用機会増加に向けた意見も公表した。

大学に就職支援を徹底するよう指示したが…

その発表主体は、中国共産党中央委員会と国務院だった。政策立案・実行に関する意思決定権を持つ機関の中でも、最上位の委員会が意見を公表したところに、政府の雇用環境悪化に対する危機感の上昇がうかがえる。

当該意見の中で政府は、主に国有企業が雇用創出に主導的役割を果たすよう求めた。長時間労働を減らすため、デジタル機器の導入などの増加も重視している。先端分野の技術向上をめざし、大学には関連分野のカリキュラムを整備し就職支援を徹底するよう指示した。就職実績が低い専攻分野には、政府が警告を出す方針も提示した。

ただ、若年層などの雇用対策は今回が初めてではない。2024年4月、7月と中国政府は消費刺激策などを積み増した。それでも失業率は上昇し、中国若年層の間では青年養老院に加え“鉄飯碗”にも関心が集まった。