「募集一人」に3500人超が殺到する状況

“鉄腕飯”とは、食べるのに困らない職業を意味する。公務員が代表的な職種といわれている。2024年、中国の国家公務員の採用予定数は、3万9600人程度と報じられた。出願者数は303万人で倍率は76.5倍、募集一人に対して3500人超が出願した職種もあった。地方政府では土地利用権譲渡益の減少によって財政が悪化し、公務員給与をカットする地方自治体も増えたが、公務員人気はかなり高い。

リーマンショック後のわが国でも、金融業界への就職を避け、公務員など雇用環境が安定した職場が良いとする若者は増えた。度重なる雇用対策にもかかわらず、中国でも同じような考えを持つ若年層は増えているようだ。青年養老院への関心の高まりは、就労をあきらめざるを得ないほど雇用環境が厳しいことを示唆する。

国慶節前までの中国政府の経済対策が、若年層の不安を払拭できるかは不透明だ。国有企業重視の経済運営で、人々の自由な発想を実現することは難しくなっている。雇用のミスマッチに拍車がかかる恐れもある。若年層を中心とする失業率がどう変化するか、不動産価格と並んで、今後の中国経済を考える上で重要性は高まっている。

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