乳歯で虫歯になっても安心、永久歯で虫歯にならなければ結果OK

前節で「虫歯予防は3歳までが肝心」という話をしました。もし既に虫歯になってしまった子どもの両親が読んだら、「3歳までに虫歯になってしまったら、もう手遅れでしょうか?」といった質問が聞こえてきそうですが、安心してください。

もし3歳までに虫歯になってしまったとしても、決して手遅れではありません。なぜなら、3歳までの歯は、まだ乳歯だからです。乳歯は6歳から7歳くらいにかけて抜け始め、永久歯に生え替わります。

そのため、もし乳歯が虫歯になってしまったとしても、その歯は抜けてしまいます。虫歯菌は口の中に残りますが、永久歯に生え替わるタイミングで、フッ素入り歯磨き粉を使ってしっかりと歯磨きをすれば、虫歯菌の酸によって歯が溶ける「脱灰」よりも、溶けた歯を修復する「再石灰化」が優位な状況を作ることができ、虫歯にならない永久歯が生えてきます。

たとえ口の中が虫歯だらけの「ランパントカリエス」のような状態であっても、永久歯に生え替わるタイミングでしっかり歯磨きをして虫歯菌をコントロールできれば、永久歯が虫歯になることはありません。永久歯が虫歯にならなければ、問題はありません。

乳歯の虫歯には、知っておきたいポイントがいくつかあります。乳歯の虫歯は黒くならずに白いことが多く、やわらかいため進行が早くなります。また、子どもは痛みの感覚が十分に発達していないため、痛みがあっても気づきにくい傾向があります。

奥歯の歯と歯の間の磨き残しに要注意

乳歯に虫歯ができやすいのは、奥歯の歯と歯の間です。磨き残しが生じやすく、見えにくいため虫歯ができても気づきにくい部分です。もし乳歯が虫歯になってしまった場合、治療方法は2つあります。

1つは、虫歯を削ってプラスチックや銀歯などの詰め物をする外科的処置。もう1つは、虫歯の進行を遅らせる薬を塗る予防的処置です。乳幼児は治療を嫌がってなかなかじっとしていられず、外科的処置が難しい場合が多くあります。

無理に治療しようとすれば、子どもに恐怖心を与えてしまいます。このような場合は予防的処置を取り、「サホライド」という薬を患部に塗り、虫歯の進行を抑制します。サホライドの主成分はフッ素と銀の化合物(フッ化ジアンミン銀)で、歯の修復を促すとともに殺菌する作用があります。

ただしサホライドには、塗ると銀の成分が酸化するため歯が黒く変色する(図表1)、味が苦いといったデメリットがあります。また、サホライドを塗ったからといって虫歯が完全に進行しなくなるわけではありません。

出所=『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)
多保学『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)

サホライドはあくまでも虫歯の進行を遅らせるという使い方で、定期的な塗布も必要になります。サホライドで進行を遅らせた虫歯は子どもがきちんと上手に歯科医院のチェアに座れるようになったタイミングで虫歯を削って詰める外科処置へ移行すると良いでしょう。

または乳歯と永久歯の交換期であれば抜けて永久歯に生え替わるのを待つのも手です。乳歯が虫歯になった時は、歯科医師と相談し、外科処置か予防的処置のいずれかを行った上で、フッ素入りの歯磨き粉で歯磨きをして虫歯の進行を防ぎます。

また、定期的に歯科医院で虫歯の状態を診てもらいながら、永久歯に生え替わるのを待ちます。

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