赤ちゃんは2歳半頃までには全ての乳歯が生えそろう

虫歯は、虫歯の原因となる細菌と飲食回数、ブラッシング、フッ化物の利用これらのバランスが崩れると起こります。したがって、虫歯のある人の口の中には多かれ少なかれ虫歯菌が存在します。

そして最近の研究では、歯面表層に定着するとされているミュータンス菌が、歯が生えていない乳児の舌からも同菌のDNAが見つかり、粘膜表面にも定着する可能性があるということがわかりました。

一般的には「歯がない時期だから、虫歯の原因菌が定着することはない」と考えられますので、あまり神経質になる必要はありません。しかし、歯が生え始めると歯の表面が虫歯菌の「巣」となり細菌が棲みつきやすくなります。

そのため、これからお話する「感染の窓」についてはよく理解しておきましょう。赤ちゃんは生後5〜6カ月頃から歯が生え始め、2歳半頃までには全ての乳歯が生えそろいます。全て生えそろうと合計20本になります。

この時期のうち、生後19カ月(1歳7カ月)〜31カ月(2歳7カ月)の時期は、「感染の窓」が開く時期と言われています。この頃の赤ちゃんの口の中は、乳歯が生えそろう前の不安定な状態で、虫歯菌が定着しやすい時期と考えられています。

虫歯菌が定着する割合は、生後19カ月で25%、31カ月で75%というデータがあります(Coufield.P.W1993)。自治体で行われる1歳半健診や3歳児健診でも、「感染の窓」が開く時期に虫歯菌への感染を防ぐために歯科検診が行われています。

口の中の細菌のバランスは、3歳までに決まります。そのため、それまでに虫歯菌に感染すると、虫歯菌の生息しやすい口内環境となり、虫歯になりやすい子どもに育ってしまいます。逆に、3歳まで虫歯菌の感染を防ぐことで、口の中の細菌バランスを整えることができ、その結果、虫歯菌が生息しにくい環境にすることができます。

3歳まで虫歯に感染しなければ、成長過程で虫歯になる可能性は4分の1

実際に、3歳までに虫歯が1本でもあった子どもと虫歯がなかった子どもとで、その後の虫歯になる可能性を比較調査したデータでは、3歳までに虫歯がなかった子どもが虫歯になる可能性は、虫歯があった子どものわずか4分の1でした。

したがって、3歳までは、虫歯に感染させないようにすることが重要です。元々虫歯菌のない子どもは、どうやって虫歯菌に感染するのでしょうか。

一般的には、両親や祖父母などがスキンシップをしたり食べ物や飲み物を与えたりする際に、唾液を介して菌が移ることが多いと言われています。

子どもにごはんを食べさせる女性
写真=iStock.com/yamasan
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しかし、虫歯予防のための対策をしっかり取れば、菌が子どもに定着することは避けられます。それよりも、3歳までに虫歯になる子どもは、食生活に問題があることが多いです。

例えば、常にお菓子を食べていたり、スポーツドリンクやジュースなど糖分の入った飲み物を飲んでいたりする「ながら食べ」は、虫歯菌の繁殖を促します。このようなながら食べをさせず、朝・晩の歯磨きを徹底することで、虫歯を予防することができます。

なお、「感染の窓」はさらにもう2段階あります。「6歳臼歯(第一大臼歯)」が生えてくる時期と、6歳臼歯よりもさらに奥に「12歳臼歯(第二大臼歯)」が生えてくる時期です。いずれの歯も、きちんと生えてくるまでは歯ブラシが届きにくいため、注意が必要です。