※本稿は、多保学『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
抜歯なしでも治せる! 矯正は10歳までに行うのが理想的
歯医者に行ったら、「永久歯が生えるまで様子見です」と言われました――。
そんな経験のある親御さんは多いかもしれません。永久歯が生えそろってから抜歯矯正を行う歯科医師は多く、世の中の矯正専門歯科医師の約9割はそのような考え方でしょう。
一般的に矯正専門医は永久歯の歯並びを治すのを仕事にしています。顎の骨ではなく、基本的に歯を動かすことに注目をしています。しかし、永久歯が生えそろうのを待つよりも、子どもの頃はもっと効果的な矯正治療の方法があります。
歯列矯正には「第1期矯正」と「第2期矯正」の2種類があります。一般的に認識されている矯正治療は第2期矯正で、永久歯が生えそろってから行う、いわゆる成人の矯正です(図表1)。
歯並びの悪い原因は顎の大きさが足りないことが多く、結果的に永久歯がきれいに並べずにぐちゃぐちゃに生えてきてしまいます。
第2期矯正では一部の歯を抜いてスペースを作り、矯正装置を使って残りの歯をきれいに並べていきます。歯に無理やり力をかけて動かす方法と言えます。それに対して第1期矯正は、歯が乳歯から永久歯に生え替わる10歳くらいまでの間に行う小児矯正です。
子どもの成長期を利用することで、より小さな負担で歯並びを整えることができます。第1期矯正では、主に顎の成長を促すこと、悪習癖を治すことを目的とした治療を行います。
まず、顎の成長について説明していきます。顎が大きく育たないと、歯が生えそろうための十分なスペースができません。子どもの歯が乳歯から永久歯に生え替わる際に、歯が部分的に重なり合ってデコボコした「叢生」になる子どもは44%と半数近くに上ります(図表2)。
そのうち約70%が前歯の叢生です。叢生が起こるのは、歯が並ぶスペースが確保できていない不十分な顎の成長のためです。特に小児期に大事なのが上顎です。
上顎は下顎より先に成長し、だいたい10歳までに大きさが決まってしまいます。この10歳が非常に重要なキーワードになるので覚えておいてください。その後、上顎の成長に合わせて、下の顎が13歳から18歳くらいにかけて成長していきます。