マイナス0歳からの予防
よく「歯が生えていないのに歯医者さんに行って良いのですか?」と患者さんに聞かれます。もちろん歯が生えていなくても歯科医院を受診するべきです。強調しますが、0歳は舌を見ることが重要だからです。
我々の法人内で妊娠の報告があった患者さんや、妊婦健診にいらっしゃった患者さんには必ず「生まれたらすぐに小児歯科に連れてきてください」とお声がけをしています。これがいわゆるマイナス0歳からの予防です。
残念ながら、日本で一般的に舌小帯強直症が発見されるのは、公的な検診である1歳半検診になります。しかし1歳を過ぎると、子どもは治療中にじっとしていられなくなります。押さえつけて無理に治療すると、子どもの記憶に残り、トラウマになる可能性もあります。
もし1歳までに舌小帯強直症を見逃してしまった場合は、5歳以降にカットすることをすすめています。5歳以降で手術する場合は、舌の筋肉を指示通り動かせるようにトレーニングを受ける必要があります。
このトレーニングをしっかりできれば、発達した筋肉までしっかりと確認しながら手術ができます。トレーニングが不十分だと、筋肉が見えにくく、どこを切っているのかわからない状態で手術を行うことになります。
母親が乳腺炎になった場合は、子どもの舌小帯強直症を疑う
つまり危険な状態で手術を行うことになるので、トレーニングができることが手術適応の条件になります。舌小帯強直症は、母親が乳腺炎になる原因の1つでもあります。赤ちゃんは舌を使って母乳を飲みます。この「吸啜運動」によって顎や口腔周囲の筋肉が成長します。
舌小帯強直症がある新生児の場合、舌がうまく動かせないため、母乳を上手に吸うことができません。その結果、お母さんの乳房が張って乳腺炎になります。このような症状をお持ちのお母さんは、乳腺炎を治すために桶谷式などのマッサージに行かれます。
結果的にお母さんの母乳が出やすくなり、赤ちゃんは舌や口腔周囲筋を使わなくても母乳を飲めるようになります。新生児の舌や口腔周囲筋が十分に運動できず、顎の発達に影響が出る可能性があります。
もし乳腺炎になった場合は、子どもの舌小帯強直症を疑い、歯科医院で検査することをおすすめします。また、母乳育児を行うのは、舌や口腔周囲筋を育て、免疫力を高めるためにも重要になります。
まずは周囲にお子さんやお孫さん、そして家族や大切な知人に適応年齢の子がいた場合、歯が生えていなくても歯科医院に行って舌を診てもらいましょう。発見が遅れ手遅れになるのは、子どもの将来にとって良いことは何1つありません。
どうかこの本を手に取っていただいた方は、このことを多くの人に広めていってあげてください。日本の将来の子どもたちのために。