親は「がむしゃらに暗記できる環境」を整えるといい

これらは幼稚園児の勘で身につけていったものだったのだが、実はどちらの話も脳科学研究などで判明している効率的な勉強法を体現しているものなのだ。

これは決して、筆者に特別な話ではない。柔軟な頭を持っている幼稚園児や小学生であれば、誰にでも起こりうる話だ。お小遣い欲しさに、がむしゃらに物を覚えようとする子どもは、勉強方法や暗記方法に対する固定観念がない。

ノートを取る、教科書を読むという勉強法は、先生や両親に言われて身につける勉強法であって、子どもが先天的に習得しているものではない。そのため子どもは、とにかく本能そのままに、暗記をしようとする。

だから自然と自分の脳の機能に適合した、理想的な形で物事をインプットしていくため、結果的に効率的に暗記する方法が身につくのである。

この話は、どんな子どもにも当てはまる。だからこそ、子どもの可能性を開花させるために、大人は「子どもががむしゃらに暗記できる環境」を整えてあげる必要があるのだ。

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「幼少期の暗唱テスト」は大学受験の基礎になる

ここまで読んだ読者の中には、「暗記が重要という話なら、別にお小遣いの話とは関係なく、塾でとにかく詰め込み教育を受けた方が良いんじゃない?」と思った人もいるかもしれない。

しかし、お小遣いを渡すことには、塾へ行く以上の意味がある。そもそも、子どもは小学校や中学校に通っている段階で、本当の意味で「勉強が大切だ」とは実感できない。

「勉強していてよかった」と思えるのは、大学進学後だったり、社会人になってからだったりと、勉強するタイミングと勉強の効果を実感するタイミングにはとても時間差がある。

実際に、筆者が47都道府県名を覚えたり、元素周期表を暗記したりしていたときには、勉強の意義などは一切感じていなかった。

しかし、暗唱テストのおかげで覚えたものは、東大受験において重要な科目の基礎となるものだった。後になってその勉強の意義を知ったし、その恩恵を受けることができた。

後から恩恵を受けるものということは、その分長期的な思考が発達していない子どもからすると、勉強の効果や意義を感じにくいということだ。だからこそ、大人に求められる役割としては、勉強をしたことを正しく報いて、子どもが勉強にメリットを感じられるようにすることである。

社会に出て役に立つのは、「テストで満点をとる力」でもなければ「塾へ行く力」でもない。大切なのは「学ぶ力」だ。だからこそ、子どもが学んだことに対して大人側から適切にメリットを提示することが重要なのである。