地頭の良い子を育てるにはどうしたらいいのか。現役東大生ライターの清野孝弥さんは「“成績がよい”という条件でお小遣いを渡さないほうがいい。子供を現役で東大に合格させるような家庭は、別のやり方を実践している」という――。
授業中の教室
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「テストで満点を取る方法」は存在しない

「子どもにとにかく勉強してもらいたい」「もっと子どもには良い成績をとってもらいたい」。そんな子どもの勉強を応援したい気持ちから、「テストで満点を取ったらお小遣いをあげる」という制度を作る家庭があると聞く。

制度というほどお堅いものではなくても、例えば「この間の学校のテストで満点取ったんだって? ご褒美にお小遣いあげるよ」といった具合に、子どもとの日常のコミュニケーションの一環としてお小遣いの話をするレベルなら、どの家庭でも一回くらいはそういった経験があるはずだ。

しかし、テストで満点を取ったらお小遣いをあげるという仕組みは、子どもの勉強に対するモチベーションに繋がらないどころか、子どもの学力を下げる危険性がある。なぜ危険なのかは、子どもの視点に立って考えると分かる。

テストで満点を取れと言われた子どもは、真っ先に、テストで満点を取る方法を考える。しかし、「○○さえすれば必ずテストで満点が取れる」といった劇薬は存在するわけではない。

例えば、ノートを綺麗に取ること、教科書を何回も読むこと、重要な部分をマーカーで引くことなどは、勉強方法の代表例なのだが、実は成績向上に効果がないと言われている。そのため、成績を伸ばすためには何をすれば良いのかが分からず、子どもたちは困惑してしまう。

宿題を丁寧にこなしたからと言って、テストで満点を取れるわけでもないし、一生懸命学校の授業を復習したからといってテストで満点を取れるわけでもない。

こうした無力感は、結局子どものモチベーションを下げることになる。だからこそ「テストで満点を取ったらお小遣いをあげる」というこの方法は、実は教育におけるタブーなのだ。

「塾へ行ったら」「ドリル終わったら」は無意味な勉強を促す

実は、お小遣いのあげ方に関するタブーは他にも存在する。例えば、「塾へ毎日頑張って通っているからお小遣い」というのも教育上悪影響を及ぼす可能性のあるタブーである。

塾へ行く子どもにお小遣いをあげる親の気持ちとしては、お小遣いをあげることをきっかけに、子どもが自発的に塾へ行くようになって、一生懸命勉強するようになってほしいと思っているのだ。

しかし、子どもからすれば、「塾へさえ行けば、お小遣いがもらえる」と思って、「塾で勉強すること」自体には興味関心がなくなってしまう。これでは、本末転倒である。

それなら、勉強すること自体を褒めたら良いのかと「ドリル1冊終わったらお小遣い」という仕組みを思いつく人がいるかもしれない。

しかし、これもまたタブーである。「ドリルを解くこと」を目標にしてしまうと、子どもたちは、適当に問題を解いて無理やりドリルを終わらせたり、乱雑に丸つけをしてドリルを終わったことにしようとしたりするものだ。

これでは結局、お小遣いを渡すと言ったがために、子どもたちは意味のない勉強をすることになってしまうから、悪影響である。

実は、ここまでで紹介したお小遣いの渡し方の例は、どれもインセンティブの設定方法に問題がある。子どもがメリットを感じるものをどのように設定するかは、子どもに勉強習慣が付くか否か、そして子どもの地頭力が伸びるか否かを決定的に左右していくことになる。