親も暗唱テストのために学び直す
ただ「学ぶ力」を適切に評価してお小遣いをあげるというのは難しい。そもそも、出題する側の大人が内容を理解していないとテストすらできない。
だからこそ、「普通の家庭では子どもを塾に行かせて、塾講師にテストをしてもらっているのではないのか」と思われるかもしれない。しかし、これは逆である。逆であるというのは、親が全ての知識を持っていないからこそ、子どもに暗唱テストを出してみると良いということである。
筆者の両親も、あらゆる分野に精通した博学だったというわけではない。むしろ、子どもにテストを出すために、親の側が勉強をしていた。
当たり前の話であるが、日本の歴代総理大臣の名前や慣用句・故事成語といった細かい知識は、学校を卒業すればすぐに忘れてしまう。だからこそ、子育ての中で親が学び直しをしていき、勉強する姿勢を子どもに示していくことが必要だ。
子どもにとって最も身近で、最も信頼できるロールモデルは、親である。
その親が、子どもの前で積極的に勉強する姿勢を見せたり、地理や歴史に関するテストを課している姿勢を見せたりすると、子どもは自然と「勉強するのは当たり前のことだ」という感覚を身につける。
子供は「親の姿勢」を見ている
これは、子どもが小学生、中学生、高校生と成長したとしても変わらない。
いきなり暗唱テストを始めることに抵抗感がある親御さんは、まずは親の姿勢を変えてみることからおすすめしたい。
仮に暗唱テストという形でなかったとしても、親が積極的に本を読む姿勢を示したり、学び直しをする姿勢を示したりすることで、子どもの勉強に対する当たり前は変わっていく。
塾から帰ってきた子どもの質問に対して、「そんなこと分からないよ。塾の先生に聞いて!」と返答するのか、「それはね、高校の物理で学ぶ○○と関連している話で……」と返答するのか。こうした一つ一つの会話を通じても、子どもの勉強に対する当たり前は変化していく。
そういう意味では、お小遣いの渡し方に関する制度設計の話とも共通していて、「どれほど親が子どもの学びに寄り添えるかが、子どもの学力に影響する」ということが言える。
とりあえず「テストの結果だけを確認してお小遣いを渡す」のか、それとも「本当に子どもが理解できているか親がテストをしてからお小遣いを渡す」のか。
たとえ親にとっては苦であったとしても子どものことを思いやった行動が取れるかどうかが、実は地頭の良い子どもが生まれるかどうかの分岐点なのかもしれない。