「暗記」には抜け道が存在しない
なぜこのように直接暗記するべき内容を伝えた上で、お小遣いをあげるのが効果的なのか。これは勉強の本質と密接に結びついている。学校のテストや塾のテストのように、複数の問題形式が用意されているスタイルのものは、問題形式や出題方法によって子どもの努力が実らなくなることが多い。
事実、テスト勉強や受験勉強を頑張っていたのに、思うように成果が出なかったという経験をしたことのある人も多いのではないだろうか。
このように努力したことが成果に直結しづらいものについては、目標を設定されても本人が辛くなるだけである。
一方で、暗記に関しては、努力をしたことがストレートに結果に結びつきやすい。効率よく暗記をしていくためには、ただ文字列だけを見たりするのではなく関連する知識との繋がりを考えてみたり、イメージ化をしてみたりなど勉強を工夫する努力が必要である。
そのため、子どもが頑張ろうと思えば思うほど、勉強において大切な思考法を身につけることができる。ここが「テストで満点を取ったらお小遣い」と決定的に異なる点である。
テストで満点を取ろうと思った子どもであれば、カンニングをしたり、学校の先生にテストの内容を直接聞いたりなど、悪知恵をはたらかせる可能性がある。しかし、暗記に関しては、「暗記パン」が存在するわけではないから、抜け道を使うことができない。
そのため、効率的に暗記をしようとすれば、すなわち勉強に最も効果的な学習法を子どもが自分たちの手で考えていくことになるのだ。
効率的な暗記方法は「反復」と「連想」
暗唱テストの仕組みを使って、筆者が元素周期表を暗記していった過程を参考として紹介する。
まず筆者は、「元素周期表を見る」という王道の方法を試してみた。ただ、水素、ヘリウム、リチウム……と単純に一つ一つ覚えてみようとしたのだが、全く上手くいかなかった。幼少期にはありがちのことだが、当時の筆者は「時間が経てば忘れる」ということを知らなかった。
記憶の仕組みがよく分からないから、一回見たものはそのまま覚えているものだと思っていたのである。しかし、そんなことはあるはずもない。
そこで、発想を転換した筆者は、時間が経てば忘れてしまうなら、一定時間が経つ前にもう一度元素記号を見ておけば、忘れないのだということに気づいた。そして、何度も繰り返し元素周期表を見ることで最終的に全ての元素を暗記することができたのだ。
意外かもしれないが、実は幼稚園児の頭で考えても、直線的にここまでの方法には辿り着ける。
また、文字列だけの元素周期表では覚えにくいと思った筆者は、元素名の音からイメージを連想して覚えてみたら、暗記しやすくなるということも、暗唱練習しているうちに発見した。
「ネオンって音は、猫の鳴き声みたいだな。でもネオンってライトに使われてるんでしょ? それなら、ネオンは光る猫ってイメージだ!」という具合である。