ここで、10年3月期の「売上高」と「売掛金」を見てみよう。売上高3億6638万円に対して、売掛金が1億8465万円で、何と売上高の半分を売掛金が占める計算だ。売掛金とは、製品やサービスなどを販売したがまだ現金が未回収の分をいう。企業にとっては債権になるが、取引相手が倒産するなどして、回収できないリスクがあることを意味する。これでは健全な経営体質であるとはいえないし、そもそも売り上げの数字自体を水増ししている可能性も考えられる。
もう1段階上級のテクニックになるが、「借入金」に注目してみよう。10年3月期実績で見ると、短期借入金、長期借入金の合計額が1832万2000円。この数字自体に何ら問題はない。
ただ、支払利息を見ると、22万6000円となっている。この支払利息を借入金で割れば、1年間の借入金利を大まかに計算することができる。借入金利は年1.2%。いくら低金利時代でも、ここまでの低金利融資が受けられる金融機関は存在しない。ということは、借入金は銀行などから借りているのではなく、社長個人が出しているという推測が成り立つ。そうなると社長がお金を出せなくなると資金繰りが悪化する可能性が高いため、社長の資産状況を別途チェックし、健全性を判断する必要が生じてくる。
逆に年15%といった高金利の場合も、一般の金融機関以外から借りた可能性が出てくるため、危険度が高い。
答え【NO】
1976年、兵庫県生まれ。大阪大学卒業後、一般企業を経て、公認会計士2次試験に合格。現在、公認会計士山田真哉事務所所長。『食い逃げされてもバイトは雇うな』などベストセラー著書多数。