すぐにビジネスにつながる「数字センス」を磨く練習問題を、ミリオンセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者が伝授。足し算、引き算、掛け算、割り算という、算数の知識があれば十分解けます。

Q.この会社への投資を考えている。着実に成長している企業かどうか。

【正解へのヒント】
・2009年、10年、11年、それぞれの決算報告書における数字の根本的な違いとは何か?
・ 会社の状況を正確に見る場合、使うべきなのはどの年度の数字か?

投資先を選ぶときも、過去の決算報告書を並列させ、数字の動きを見る必要がある。売り上げや利益が着実に伸びていて、財務も健全というのが理想だ。

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決算報告書

では、ここに挙げたE社は、決算書から見て投資に値するだろうか。ざっと見たところ、現預金は着実に増えている。09年の実績が1926万円、10年実績が3888万円だが、11年の予測は約3倍の1億円に達している。売上高も09年実績が1億5108万円、10年実績が3億6638万円で、11年予測が5億3690万円と着実に伸びている。税引後当期純利益は09年、10年の実績は赤字だが、11年3月期の予測では415万円の黒字転換が見込まれる。

これだけ見ると、小さいながらも着実に伸びている、将来有望な企業というふうにも見えてくる。しかし、ここに落とし穴があるのだ。ポイントは11年3月期の数字である。09年3月期と10年3月期の数字は「実績」であるのに対し、11年3月期の数字は「予測」である。「予測」なのだから、本当に数字が達成できるかどうかは、実際に11年3月期の決算を締めてみないとわからないのだ。

決算書の中の「予測」や「計画」といった数字は、企業側がいかようにもつくることができる。ここを前年度に比べて悪くする企業はほとんどなく、現状を判断する材料には使えないと考えてよい。とすると使えるのは09年と10年の実績データのみということになる。