人間の心理を深く掘り下げてはじめて見えてくるもの

つまり、「あたりまえ」が実現する未来を示したとき、人々の潜在的欲望が「そうそうそうなってほしかったの」と反応してもらわなくてはなりません。

ビジネスパーソンとしてのみなさんが描く未来像は、人々のインサイトをとらえていますか?

それは自分勝手な未来像になっていませんか?

そう、私たちはもっと徹底的にインサイトに向き合うべきなんです。

インサイトは直訳すると「洞察」です。そもそもインサイトは、表層的な言葉や態度からはわかりません。人間の心理を見つめ、深く掘り下げなくてはわからないのです。

でも、インサイトが発見できれば、あとはシンプルにその欲望を実現する方法を提供してあげればいいのです。そう、インサイトは100%優しく抱きしめてあげればいいのです。

正しいインサイトが見つかっていないから、人は企画をこねくり回してしまうのです。

グーグルが「インサイト」を巧みに利用したケース

インサイトを見つけるのはなかなか難しいわけですが、それを見事にやってのけている事例をご紹介します。

2004年、アメリカのグーグルはMITやスタンフォードなどを卒業したスーパーブレインズといわれる優秀な理系人材を求めていました。その採用促進をクリエイティブエージェンシーであるクリスピンポーター・アンド・ボガスキーに依頼しました。

普通のアドエージェンシーであれば、スーパーブレインズがどんなメディアを見るか調べて、そこに採用広告を出稿するわけですが、彼らはまったくちがうやり方でこのミッションを達成したのです。

名門理系大学の付近の看板に大きく奇妙なメッセージを掲げたのです。

出典=『「あたりまえ」のつくり方』

そこには、「{first 10-digit prime found in consecutive digits of e}」と書いてありました。看板や横断幕にはグーグルについてはひと言も書かれていませんでした。