経営大学院では人的ネットワークづくりが重視される

私自身、会計専門職大学院と経営系大学院の両方を経験しましたが、それぞれの進学動機には大きな違いがありました。会計専門職大学院では、主に専門性を深めることが目的で、進学した同級生はほぼ例外なく会計士や税理士を目指していました。

また、既に会計・税務業界に身を置きながら自身の知識をアップデートするために通っていた社会人も多く、人的ネットワークの構築よりも専門性向上が優先されていました。法科大学院も同様に、弁護士を目指すか、法務の専門知識を深めることが主たる目的となっているケースが一般的です。

一方、経営系大学院では、同級生の多くが人的ネットワークを構築することを重要視しており、学位取得を通じてキャリアアップを図る意図が強く感じられました。この違いは、専門職大学院と経営系大学院の役割の違いを端的に表しているといえるでしょう。

起業家富裕層には海外大学院で学んでいる人が多い

最近、私たちが学校を卒業して社会に出た後も、必要に応じて学び直す「リカレント教育」や「リスキニング」という言葉をよく耳にしますが、筆者も47歳から49歳の間に働きながらオーストラリアのビジネススクールで現地受講に加え夜間とオンライン受講でMBAを取得しました。

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私のお客様である起業家富裕層の多くは20代のときに海外の大学院で学んだ経験を持っています。約30年の税理士の仕事を通じて、お客様のビジネスの多様性を目の当たりにして、税務知識だけでは十分ではないこと、そしてお客様の経営をサポートするために、まず社会があり、その社会を広く知ることの大切さを感じてきました。

もちろん、税金の側面でも「経済合理性」という判断基準があるのですが、経済合理性を説明できる経験や視点としても税金の知識だけではない教養はとても大切になります。

節税とは、税法の規定の範囲内で経済的合理性のある行為を行い、結果として税を軽減することですので、税法や判例に基づくことが前提になりますが、お客様が生きているスタンダードを知っておくこと、社会を知ることはお客様を守ることにもつながるのです。