「院卒は就活で不利」と言われる。それはなぜなのか。東京大学の濱中淳子教授は企業の人事担当者5名と人材コンサルタントにインタビューを実施。その結果、企業の大きすぎる期待と、大学院生の見当外れの自己PRという「すれ違い」があることがわかった。濱中氏は「このすれ違いは修復できるはずだ」と分析する――。
2018年06月01日、選考活動が解禁となり、企業の面接を受けるため列を作る学生ら(写真=時事通信フォト)

「安定雇用に就かない者が半数以上」という現実

2019年1月14日、朝日新聞朝刊に「博士求ム!企業の採用活発」という見出しの記事が掲載された。就活で厳しい状況が続いてきた大学院博士課程学生をとりまく就活事情に変化が起きているという。学生は早くから企業でのキャリアを視野に入れて準備するようになり、企業の方も博士専用の採用枠を設けたり新卒採用枠で応募できるようにしたりする例が増えているそうだ。

記事には興味深い事例も紹介されている。東京工業大学で開催されている就職情報交換会の例。博士人材を積極的に評価する製薬会社や電機メーカーの声等々。とくに大学関係者からすれば、明るい気持ちになるニュースだが、紹介事例がいわゆるトップ大学に限られている点、そして文系が含まれていない点に隠されたメッセージをみてしまうのは、斜に構えすぎた見方だろうか。ただ、ここで公表されているデータを集計してみると、いまだ滞っている院卒採用の現状が明らかになる。