数年の違いで採用基準が急上昇する

人材派遣関連コンサルタントのV氏は、ビジネスの進め方について次のように述べていた。自身が勤務していたこともある大手企業について語ってくれたものである。

Xさん(=社長)は0から1を生み出すことに対して、天才的な方です。そして、社長の右腕のYさんは、それをビジネスにするときに旗振り役が上手い。Yさんは、正直、0から1を生み出すことはできませんが、2から4にするあたりのすごさは、目を見張るものがある。言い方を変えれば、XさんのいまがあるのもYさんあってのことですし、Yさんの方もXさんのアイディアがなければ自分の能力を活かせません。そして、Yさんが4までもってきたものを、社員が役割を分担しながら10までに育てるのです。
(V氏)

人には得手不得手がある。トレーニングで強みにできた部分もあれば、できなかった部分もある。それを補い合って一つのかたちにするのが企業という組織なのだとすれば、それをすべて一人に求めるというのは、やや無茶な要求ではなかろうか。

興味深いことに、学部卒の採用のことになると、このような話はきかれない。即戦力を求める声が強まったという指摘もあるが、それでも「アイディアの発案からかたちにまで」といったことを求められることはない。たかだか数年の教育年数の違いで、採用される基準が著しく上昇する。この高すぎる基準が大学院修了者の就職を阻む原因であり、企業側の問題だと指摘することもできるように思われる。

朝日新聞の紹介事例のような変化も一部で起きているのだろうが、不安要素が多い院卒就活市場である。状況が改善することはあるのだろうか。