韓国ドラマ「イカゲーム」と共通するゲーム性

この「TESAKI」が積極的に取り入れている「ゲーム性」がいかに大切かを考えたとき、過去にこの特性をうまく利用して成功した例が頭に浮かぶだろう。世界的大ヒットとなり、各国からのリメイク権オファーが後を絶たない韓国ドラマ「イカゲーム」である。

借金で首が回らなくなった人々が一発逆転をかけて命がけの様々なゲームに挑んでゆくという内容だが、このドラマの秀逸なところは従来の韓国ドラマの定番と言われてきた「ヒット作の要素」である「社会派」を捨てたことだ。そのことで、家族愛、友情、親子愛、愛憎といった普遍的なテーマに見事に振り切った。

「だるまさんがころんだ」「砂糖菓子の型抜き」「綱引き」「ビー玉」「飛び石」などは、決してハイレベルの“技を競う”競技ではない。誰にでもできるチャレンジになっている。しかも、そこには「偶然性」という“ゲーム的な”要素を計算して散りばめているのである。

「TESAKI」の番組担当者は「ひと擦りして反省点や改善点が見つかったので、次やったらさらに面白くブラッシュアップできると思っています」と自信をのぞかせる。番組はいまはTVerで見られる。今回の記事で分析した点をチェックしてみてほしい。

2023年の世界全体の番組フォーマット輸出量を比較してみると、トップはイギリスの25%、続いてアメリカの24%、オランダ15%である。この3大フォーマット大国に追随するようなポジションにいるのが、フランスと同率5%の日本である。

テレビ局の「地上波ファースト」はもう時代遅れ

だが、トップのイギリスと日本の間には決定的な違いがある。NO.1のイギリスは、番組制作時にすでにフォーマット化を意識した企画を練っているのだ。私は、日本もそうなってくると確信している。

フォーマットを実際に売る立場にあるライツ担当者は私に「『番組を海外へフォーマットセールスするのだ』という意識が作り手にあるかどうかが『売りにくい、売りやすい』に直結する」と語った。

番組作りには「成功体験」と「社内理解」が不可欠だ。フォーマットセールスも同じである。リスクなくしては利益を生み出せない。「金の卵」は最初から金ではないのだ。普通の卵を産むことを繰り返しある日、金の卵を誕生させることに成功する。

しかし、テレ東をはじめとした民間テレビ局にとって楽観視は禁物だ。地上波の番組をフォーマットセールスするという従来のビジネススタイルとは違う、新しいパターンが誕生しているからだ。

吉本興業が制作したAmazon Prime Videoで配信中の「HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル(略称:ドキュメンタル)」は、メキシコを皮切りにオーストラリア、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス、ブラジル、カナダなどでフォーマットセールスされている。こういったSVOD発のフォーマットセールスは今後、テレビ局にとって大きなライバルとなるだろう。

うかうかしてはいられない。テレビ局は、フォーマットセールスの将来性を認識し、可及的速やかな対策を練ることをお勧めする。

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