進化した容器と殺菌で“新鮮さ”を閉じ込める
長期保存と栄養価という観点では、実は市販される冷凍野菜も、旬でない時期の常温野菜と比較すると優れていることが多い。東京海洋大学名誉教授の鈴木徹氏(食品冷凍技術推進機構代表)が説明する。
「鮮度がいいものを冷凍すれば、冷凍前の栄養素をキープできます。ほうれん草は冷蔵庫に入れておくと1週間くらいで栄養素が半分以下になってしまいますが、冷凍であれば数週間、数カ月と、冷凍前の状態を保てます」
私の手元にあるロングライフ牛乳の商品パッケージには〈搾乳後、48時間以内に生乳を受け入れ、乳成分を調整せずに殺菌し、無菌状態でパックしています〉と書かれている。
進化した容器と殺菌によって“新鮮さ”を閉じ込めていると言っていい。
厳しい衛生基準で製造され、消費期限が延びた食品は、本来まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らすことにもつながる。国内の2022年度の食品ロスは472万トン。前年度より51万トン減少したが、いまだに多くの食品ロスが発生していて、国民一人あたり年間3万円超、日本全体で4兆円という経済損失だ。
井上教授は「今ある資源を食べ尽くすという意識が重要」と強調する。
「今、日本は何とか輸入できていますが、円安が進んで厳しい状況になるときもくるかもしれません。食料自給率が38%と低い日本で、食品ロスを減らす努力がさらに必要です」
長期保存が可能で、新鮮な食品の数々――災害対策や食品ロス削減を兼ねて日常に少しずつ取り入れたい。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年9月13日号)の一部を再編集したものです。