「新卒一括採用、年功序列、終身雇用」の終焉
賃上げを続けることが難しい企業は、他社に人材を引き抜かれる恐れが増す。賃上げが難しく人材が流出し、“人手不足倒産”に陥る中小企業も増えているという。今後、賃上げの重要性は高まりこそすれ、低下するとは考えにくい。わが国の企業にとって賃上げの余力は、企業の長期存続を脅かす要因の一つとなっている。
第2次世界大戦後、わが国の産業界、特に大企業では新卒一括採用、年功序列、終身雇用の雇用慣行が定着した。わが国の一般的な給与体系では、勤続年数が長くなれば、自然と給与は増加傾向を辿るケースが多い。しかし、経済が複雑化し、個々人の専門性が求められる時代になると、そうした旧態依然としたシステムはワークしなくなる。
労働市場の硬直性は、バブル崩壊後、わが国経済が長年にわたって停滞期から脱することができなかった原因の一つになった。そうした状況から脱却し、目先の人件費を圧縮することで、中長期的に実力・実績ある人を主要ポストにつけ、新商品や新規事業を紡ぎだす。それによって、企業が高い成長を目指す。そうした考え方が必要になっている。
総裁選でも「解雇規制の緩和」が争点に
早期退職制度を活用して勤め先を退職した後、これまでに習得したスキルを活かして競合他社などに転職する人は増えている。大手企業に勤務した経験を活かして、中小企業向けのコンサルタントとして活躍する人もいる。
早期退職を実施した企業側でも、内外の企業で実績を積んだ“プロ”を採用し、相応の給与を支払うケースも増えた。早期退職がきっかけとなって、わが国の労働市場の流動性が高まる兆候が見られつつある。
自民党の総裁選では、候補者のほとんどが解雇規制の緩和を重視する。労働契約法の第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めている。ただ、どういった条件であれば企業が従業員を解雇可能か、必ずしも明確ではないとの指摘は多い。