“加害者扱い”されてしまう被害者たち

世間は清廉潔白でなければ被害者とは見做さない。

阿部恭子、岡田行雄『刑事法をめぐる被害に向き合おう! 被害者・加害者を超えて』(現代人文社)

「家に帰れば妻と口論になるし、飲み歩いていた時期もありましたよ。テレビに出れば売名だと批判されますが、すべて萌の情報を集めるためです。娘がいなくなったんです! 戻ってくるなら悪魔にだって魂を売りますよ! 私たちは必死なんです。上品なことばかりしてはいられません」

ところが、萌の失踪に関する有力な情報は得られないまま、和夫の自宅には見知らぬ車が止まっていたり、カメラを向ける人々が度々訪れるようになった。

ある日、妻からの電話で和夫が慌てて自宅に戻ると、庭に見知らぬ男性が入ってきていた。

「遺体をどこかに隠してるんだろう! 早く自首しなさい!」

すぐに警察を呼んだが、侵入者は注意されるだけで逮捕されることもなかった。身の危険を感じるようになった一家は、転居を余儀なくされた。

和夫は、娘の消息がわからない不安と同時に、もし、娘が遺体で発見された場合、自分が逮捕されるのではないかという不安にも苛まれるようになっていた。本件のような、被害者でありながらも犯人視される未解決事件の家族からも、相談は多数寄せられている。

和夫のように、声を上げ注目が集まるとバッシングされることから、沈黙を余儀なくされている人々が数多く存在している。このような、声なき声を拾う努力が社会に求められている。

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