失踪した娘の捜索活動が「売名行為」だと批判される

「いつになったら、私たちは被害者として救済される日が来るのでしょうか」

壁に手をつきうなだれる男性
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
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遠藤和夫の長女・萌は、ある日突然、行方不明になり、未だに消息がわかっていない。捜査が進展しない中、和夫はどんな小さな手掛かりでも欲しいと、一時、積極的にメディアに出演して情報提供を呼び掛けていた。世間から同情が集まり、和夫は悲劇のヒーローとして地元では議員に推す声まで上がった。

「萌がいなくなってから仕事に集中できなくなってしまい、出馬については前向きに検討していました。捜索活動を通していろいろな方と話をするのは気が紛れたし、私が少しでも有名になれば、情報が集まるのではないかとも考えました」

ところが、和夫は事件を利用した売名行為だとバッシングされるようになった。そして次第に、ネットの掲示板では、和夫が犯人ではないかという書き込みが増えるようになっていた。ある日、和夫が警察から呼び出しを受けると、警察には、和夫が萌を虐待していたという情報が寄せられているというのだ。

「萌ちゃんには障害があって、育てにくかったようですね。お父さんは随分と厳しく接していたようですね」

これまで被害者として接してくれていたはずの警察は、次第に和夫に疑いの目を向けるようになっていた。妻が電話に出ると、

「人殺し!」

そう言って電話を切る人もいた。

ネットで拡散された「両親犯人説」

「萌ちゃん事件は、両親が障害者の娘を疎ましく感じて殺した可能性が高い」
「○○山は、暴力団がよく死体を遺棄する場所。あそこに捨てたら見つからないだろう」

本件に関するネットの掲示板では、和夫が犯人だと疑う書き込みが日増しに増えていった。家に籠もる妻と活動的な夫との間には距離ができ、娘の失踪は、夫婦関係もぎくしゃくさせていた。地元で有名人になってしまった和夫の行動は逐一、ネットに報告され批判された。

「父親は飲み歩いてたからね。娘がいなくなった父親とは思えない」
「妻子ほったらかしてテレビ出ていい気になってる」